研究課題/領域番号 |
18K01199
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研究機関 | 駒沢女子大学 |
研究代表者 |
牧野 冬生 駒沢女子大学, その他部局等, 準研究員 (50434387)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 墨米移民 / 想像的伝統 / 創作的伝統 / 伝統の継承 / メキシカン・コミュニティ |
研究実績の概要 |
本研究の3年目にあたる2020年度における研究実績は、以下の通りである。 2020年度は、研究の最終年度として墨米移民に関わるフィールドワークを実施予定であったが、2020年2月より世界的に蔓延したコロナウイルスの影響で、全ての渡航について断念せざるを得なかった。そのため、2020年度に関しては、2018-2019年度の収集した文献や、インタビュー資料についての整理と分析の作業を行った。具体的には以下の通りである。 1)「米国在住移民の複数世代間における「伝統の継承」と米国における想像的伝統の変容」においては、メキシコシティーに居住する複数世帯、単身世帯へのインタビュー調査結果を整理した。そこでは、出稼ぎの時期や世代により発生する伝統継承の差異を確認することができた。2)「継承された伝統の発露としての墨コミュニティにおける文化実践と居住空間の構築」においては、実際の移民家族の居住スペースおよび社会空間を確認した。また、メキシコの故郷の伝統の発露の場としての具体的空間について考察した。3)「メキシコ地方都市の伝統的景観と米国の墨コミュニティの比較と共創的社会景観の提示」については、上記の資料を再度精査することで、理論化の道筋について確認できた。 本研究の目的は、これまでのキリスト教を軸とした宗教的な伝統儀礼が米国の社会空間を変容させている現状の中で、墨米移民と故郷の住民の両者の役割を組み入れた「共創的社会景観」を提示することにあった。本年度は、こうした目的を踏まえた上で資料精査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の各課題における進捗状況は、以下の通りである。コロナウイルスの影響で、墨米移民に関わるフィールドワークを実施できなかったため、新しいインタビュー資料や追加の情報を十分に手に入れることが難しい状況であった。よって、これまでの資料の精査が主になった。 1)「米国在住移民の複数世代間における「伝統の継承」と米国における想像的伝統の変容」においては、米国生まれの次世代と不法移民の子供に着目した昨年の成果を再度精査することで、自己のルーツ(故郷)探索を含むメキシコへの観光的帰郷の実態を確認した。 2)「継承された伝統の発露としての墨コミュニティにおける文化実践と居住空間の構築」においては、徐々に世代交代により伝統的なカトリック儀礼を中心とした表象が減少し、宗教的な紐帯が衰退する現状を確認した。 3)「メキシコ地方都市の伝統的景観と米国の墨コミュニティの比較と共創的社会景観の提示」については、宗教儀礼に伴って出現する仮説的な儀礼空間について整理できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の4年目にあたる2021年度に向けては、2018-2020年度の調査結果と研究成果を再度整理した上で、必要となる情報の確認のためにZoonなどによるインタビューを実施することを予定している。 また、可能であれば米国やメキシコにおけるフィールドワークを実施したいと思っているが、現在のコロナウイルスの事情を踏まえて、事前情報を掴みながら十分に注意していきたい。また、現地の研究機関とも密接な連携をとり、研究成果の批判的な考察を行い、研究成果の深化を目指す。 墨米移民同士の強い紐帯関係と、米国に存在するメキシカン・コミュニティへ故郷の伝統社会から住民が訪問する新たな観光についても着目していきたい。SNS等の情報機器によって繋がる不可視的な社会空間も調査対象とすることで、「共創的社会景観」の理論化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)旅費に関しては、コロナウイルスの影響により渡航が全てできなくなったことが理由である。また謝金に関しても同様に、現地での共同研究者への支払いがなくなったため、次年度使用額が生じている。 (使用計画)使用計画としては、フィールドワークが可能であれば旅費を予定している。また、本研究に関連する資料の購入と研究成果の公表に伴う翻訳校正の費用などを予定している。
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