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2020 年度 実施状況報告書

ヒマラヤ地域における所有-社会的制御能の系譜学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01200
研究機関立命館大学

研究代表者

橘 健一  立命館大学, 政策科学部, 非常勤講師 (30401425)

研究分担者 渡辺 和之  阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)
山本 達也  静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードアニミズム / サバルタン / 狩猟採集 / ヒンドゥー / 近代的開発 / 形而上学
研究実績の概要

本年度も、新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外調査を実施できながったが、文献研究を進め、これまでの研究成果を整理しつつ共同で理論的考察を進めた。
まず、アニミズム的な実践をおこなうことから「未開」扱いされるヒマーラヤ先住民をサバルタンと捉え、スピヴァックらが推進するサバルタン研究の内容を精査し、サバルタンの意識に迫るために「与えるー与えられる」という所有の過程で組織されるサバルタンの存在論的な表現を把握する必要を説いていることを確認した。そこからヴィヴェイロス・デ・カストロの論じるアマゾニアのアニミズムとヒマーラヤ先住民のアニミズムの比較検討をおこない、両者において獲物と捕食者のあいだの所有が「与えるー与えられる」が入れ替わる闘争という形式で捉えられていることを確認した。また、アマゾニアでは獲物の世界から捕食者の世界にもたらされる力を自らの力とする志向が見られるものの、ヒマーラヤでは獲物の力を避けたり、分散したりする志向が見られることがわかった。
それ以外に、ヒマーラヤのヒンドゥー的な儀礼や言説などを比較検討し、そこから自然/文化の対立を前提とした自然主義的な形而上学が浮上することを確認し、その形而上学の形式が、牧畜農耕の様式と重なることを見出した。さらに近代的開発言説にも自然/文化の対立図式が見られることと、ヒンドゥー的な図式とは異なり、そこには進歩の図式が伴っていることを見出した。今後は、チベット・ビルマ語系のアニミズムとインド・アーリア語系のヒンドゥーの所有のあり方の比較を精緻化しつつ、より多角的に検討を進める必要があることも確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本年度も、計画に含まれていたネパールやインドなどでの国外調査を新型コロナウイルス感染拡大の影響のために実施できず、予定していたフィールドワークによる資料蒐集が全くできなかった。そのため、進捗は遅れていると言わざるをえない。ただしその分、文献調査の充実を目指し、理論史を整理し、ヒマーラヤ周辺領域の民族誌を広く渉猟した。その成果を研究代表者と分担者で共有し、研究会で発表し、議論を深めることができたた。それにより、研究は確実に前進した。現在、その成果をもとに、チベット・ビルマ語系とインド・アーリア系の所有のあり方の比較に焦点を当てて、論文を作成中である。

今後の研究の推進方策

現在、国内だけでなく、フィールドワークを予定していたインドやネパールでも変異型の新型コロナウイルスの感染が広がっており、本年度中の渡航並びにフィールドワークの実施は、厳しい状況である。文献調査を進めつつ、秋まで状況の改善を待ち、可能なら冬にフィールドワークを実施する。それが難しいようなら、文献調査による資料のみで研究をまとめるか、研究課題の延長を申請するか、研究代表者、分担者で討議して、秋口には方針を決定する。
延長しない場合、本年度の文献調査による成果の発表(学会発表や論文の投稿、書籍の出版等)を目指す。延長する場合は、あらたに調査・研究計画を立案し、次年度に備える。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染拡大の影響で当初予定していた国外調査が実施できなかったため次年度使用額が生じた。本年度に、国外調査が可能になれば、そのための渡航滞在費を使用するが、国外調査ができない場合は、研究課題の延長を検討する。国外調査を実施できなくても文献調査により研究を推進できた場合、研究成果の発表に費用を振り分ける。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) 図書 (6件)

  • [雑誌論文] 「動物を神に捧げ、共食する:南アジアの祭礼と諸宗教間での肉食観の違い」2020

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 雑誌名

      ビオストーリー

      巻: 34 ページ: 46-58

  • [学会発表] チェパン存在論の潜在力-ヒンドゥー的、近代的存在論の地平展開の試み2021

    • 著者名/発表者名
      橘健一
    • 学会等名
      研究会「南アジア・ヒマーラヤ地域から存在論的民族誌の可能性を探る」
  • [図書] インド・剥き出しの世界2021

    • 著者名/発表者名
      橘健一,他
    • 総ページ数
      456(283-308)
    • 出版者
      春風社
    • ISBN
      978-4-86110-665-1
  • [図書] 世界を環流する〈インド〉2021

    • 著者名/発表者名
      橘健一,他
    • 総ページ数
      368(130-159)
    • 出版者
      青弓社
    • ISBN
      978-4-7872-7437-3
  • [図書] チベットの歴史と社会 下2021

    • 著者名/発表者名
      山本達也,他
    • 総ページ数
      430(52-74)
    • 出版者
      臨川書店
    • ISBN
      978-4-653-04562-5
  • [図書] An Anthropology of Ba2021

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya YAMAMOTO,他
    • 総ページ数
      204(124-139)
    • 出版者
      Kyoto University Press & Trans Pacific Press
  • [図書] 現代ネパールを知るための60章2020

    • 著者名/発表者名
      橘健一,他
    • 総ページ数
      404(279-283)
    • 出版者
      明石書店
    • ISBN
      9784750350158
  • [図書] Resistant Hybridities: New Narratives of Exile Tibet2020

    • 著者名/発表者名
      Tatsuya YAMAMOTO,他
    • 総ページ数
      294(147-164 )
    • 出版者
      Lexington Books

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公開日: 2021-12-27  

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