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2021 年度 実施状況報告書

ヒマラヤ地域における所有-社会的制御能の系譜学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01200
研究機関立命館大学

研究代表者

橘 健一  立命館大学, 政策科学部, 非常勤講師 (30401425)

研究分担者 渡辺 和之  阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)
山本 達也  静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワードヒマーラヤ / アニミズム(パースペクティヴィズム) / 圏論 / オブジェクト指向存在論 / 原始共産制 / 憑在論
研究実績の概要

本年度も新型コロナウイルス感染拡大の影響で、国外フィールドワークを実施することができなかったため、引き続き文献研究を進め、共同研究者間での議論を進めた。
ネパールの歴史資料から、先住民のゆるやかな所有(共有)感覚に、恐怖の対象からの避難という視点が関わっていること、逆に王国を築くヒンドゥー教徒のなかには石壁による防衛という視点が関わっていることを見出し、さらに震災などの集団的な避難が防衛された所有領域を開くことを確認した。
さらに理論的な検討で、ヒマーラヤの狩猟採集に関わる所有の問題が、数学の圏論(category theory)、ハーマンによるオブジェクト指向存在論と多くの部分で重なることを確認した。両者に関する議論で、対象にされない「外部」を記述に含めることの重要性が指摘されており、それをヒマーラヤ地域の所有の問題とどう結びつけることができるのか、討論をおこなった。
そのなかで、マルクスの原始共産制論では、定住生活以前の集団が食糧や道具などの供給地を防衛・共有することを基礎としているが、ヒマーラヤの避難の視点とともにある半定住的生活における共有は、「外部」としての諸存在の眼差しへの共感と、その眼差しによって対象とされる恐怖が基礎となっていることを確認することができた。
そうした外部的存在に対する共感や恐怖は、アニミズム(パースペクティヴィズム)やシャマニズムの世界とも結びついる。マルクスは民衆による現実の社会改革を妨げるものとして唯物論的に宗教を批判したが、定住以前の共有を支えるのも、そうした亡霊と結びついた宗教的なものだということになる。その点から、マルクス自身が亡霊に取り憑かれていたと見る、デリダの憑在論も検討に加えることになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

フィールドワークが実施できなかったため、文献研究を進め、理論的位置づけを進めている。当初の計画にある系譜学的な探求は、やや遅れているが、理論的な考察は、ほぼ順調に進められている。

今後の研究の推進方策

2022年度に本研究を延長することが認められたので、次年度は、上記の研究実績を基礎として、ヒマーラヤ地域で所有に関するフィールドワークを実施する予定である。その上で、研究代表者と分担者のあいだで討論を進め、本研究のまとめ作業をおこなう予定である。

次年度使用額が生じた理由

予定していた国外のフィールドワークが新型コロナウイルス感染拡大の影響で実施できなかったため、次年度使用額が生じることになった。次年度には国外フィールドワークを実施し、そのための旅費と機材購入を中心に予算を使用することを計画している。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] ネパール語を翻訳するのは誰か?2022

    • 著者名/発表者名
      橘健一
    • 雑誌名

      月刊「地理」

      巻: 802 ページ: 45-51

  • [雑誌論文] 書評論文「古川不可知『シェルパと道の人類学』」2022

    • 著者名/発表者名
      山本達也
    • 雑誌名

      南アジア研究

      巻: 33 ページ: 65-72

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ヒマラヤにおける 2 つの羊毛敷物:チベット絨毯とネパールのラリの生産と流通2021

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 雑誌名

      国際ファッション職専門大学紀要

      巻: 1 ページ: 33-42

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 羊毛を運ぶ背負いかごドコ2021

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 雑誌名

      月刊みんぱく

      巻: 45(12) ページ: 16-17

  • [学会発表] コメンテイター「ヒマラヤ地域研究の最前線」2022

    • 著者名/発表者名
      橘健一
    • 学会等名
      2021年第1回ネパール・ヒマラヤ研究会
  • [学会発表] 焼身自殺者を哀悼するー難民社会での焼身自殺への応答に関する考察2022

    • 著者名/発表者名
      山本達也
    • 学会等名
      京都大学東南アジア地域研究研究所2021年度IPCR(萌芽型Ⅳ)採択課題「共生的関係の発露をめぐる地域間比較研究:東南アジアの境界域および紛争経験社会における移民・難民と身体に着目して」
  • [学会発表] ヒマラヤ家畜回廊:祭礼に伴うネパールを中心とした畜産物の流通と広域経済2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      フィールドネットラウンジ「みんな、ここを通った」戦争・交易・巡礼から見るヒマラヤ交易路の盛衰史(東京外国語大学)
  • [学会発表] 「コメント」九州山地の生き物と人:佐々木高明と焼畑文化複合に注目して2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      生き物文化誌学会・焼畑例会(国立民族学博物館)
  • [学会発表] 災害に負けない人びとの営み:2015年ネパール大地震の事例から2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      羽曳野市民大学(LICはびきの)
    • 招待講演
  • [学会発表] 国境を越える家畜:インド・バングラデシュ国境における牛交易2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      日本地理学会(東京大学)
  • [学会発表] 「リ/ゾナンスへの人類学的アプローチ・音楽とパフォーマンスのフィールドから」分科会コメンテーター2021

    • 著者名/発表者名
      山本達也
    • 学会等名
      日本文化人類学会第55回研究大会
  • [学会発表] シンポジウム ヒマラヤにおける生き物と人-野生動物・家畜・人のコンタクトゾーン-趣旨説明:移牧から見る野生動物・家畜・人の関係2021

    • 著者名/発表者名
      渡辺和之
    • 学会等名
      生き物文化誌学会・学術大会2021(国立民族学博物館)
  • [学会発表] Pack Animals and Tourism: Preliminary report about use of transportation in case of Nepal Himalaya.2021

    • 著者名/発表者名
      Kazuyuki Watanabe
    • 学会等名
      Global Land Project conference 2021. 16 September 2021, Online.
  • [図書] 「国民国家の暴力が生み出した地位を生きる人々」『現代アジアを掴む』2022

    • 著者名/発表者名
      山本達也
    • 総ページ数
      89-102
    • 出版者
      明石書店
  • [図書] 「運命的瞬間が人を歌手にする」『官能の人類学』2022

    • 著者名/発表者名
      山本達也
    • 総ページ数
      87-108
    • 出版者
      ナカニシヤ出版

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公開日: 2022-12-28  

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