本年度は最終年度であったが、コロナウイルスの感染拡大を受けて、データを補足、修正するためのフィールドワークをおこなうことができなくなったため、SNSを通じて「大媽」(「広場ダンス」の主催者たち)や参加者から情報提供を受ける形での調査へと切り替えた。 また、中国におけるコロナウイルス感染症の拡大時期には、外出や人々の集合が困難となり、「広場ダンス」そのものも調査対象地域では不可能となった時期があることから、「広場ダンス」そのもののフィールドワークは完結できないまま研究を終了することとなったが、他方で、この時期に、SNSを通じた情報のやり取りが増加し、動画共有を通じて代替的にではあるが自宅でダンスに励むなど通常時には明確に意識されない領域の活動を確認することができた。 以上のように、本年度の研究は、研究期間の最終年度としては、「広場ダンス」の現場でのフィールドワークについては当初の計画どおりの十分な成果を上げることができなかった。その代替的方法としてインターネットを介した手法を中心としたが、計画時よりSNSによる交流を考察対象に含めていたことから、この方向に展開することで研究の目的に掲げた考察に必要な、社会関係およびダンス継続の動機となる「人」のイメージについてのSNS上での相互交流のデータや、しばしば「自分のため、人のため」と説明される「幸福」観に関する「大媽」たちの個人史的資料を収集することが可能となった。
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