本研究は、近年、中国において広く普及した「広場ダンス」を対象として、人々の集まりが現象化する構成原理を考察した。具体的には、複数のダンスグループへの参与観察およびグループの歴史についての口述史を資料として、人々の集まりが生成、維持される状況を考察した。その結果、中国に関する人類学研究が明らかにしてきたように、これらのグループを構成する原理が、人々が明確な輪郭を持つ「集団」としてではなく、柔軟な関係性の束として考えられることを指摘すると同時に、その手段としてSNSの利用といった現代社会の技術的側面や現代中国における人々の流動性の拡大、「幸福」観を背景に急激な普及をみたことを分析した。
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