研究課題/領域番号 |
18K01203
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研究機関 | 長野県立大学 |
研究代表者 |
織田 竜也 長野県立大学, グローバルマネジメント学部, 准教授 (00431841)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | テーマのある空間 / スローフード / フードカート / フードトラック / 食文化 |
研究実績の概要 |
本研究は「テーマのある空間(Themed Space)」概念を用いて都市空間を考察する。初年度は米国オレゴン州ポートランド(約3週間)及びワシントン州シアトル(約1週間)でフィールドワークを実施した。 ポートランドでは徒歩、路面電車、バスを利用して市街を散策し、現地の概況を把握した。初年度の「テーマ」は「スローフード空間」ということで、600台ほど存在するフードカートを調査した。フードカートはトラックの荷台を利用した移動屋台で、フードトラックとも呼ばれる。町の一角を占める駐車スペースが「ポッド」というエリアになっていて、歩道に向かって数十台のフードカートが稼働していた。町の中心部には4つの「ポッド」があった。町の中心部で数百台のフードカートを観察し、外観やメニューを撮影した。価格は日本の移動屋台のメニューと比較すると安くはないが、周辺レストランのランチと比較すると安く、おおむね$8-10であった。 またファーマーズマーケットの調査も実施した。フードカートは数台だったが屋台の数は多く、網羅的な調査は次年度以降の課題だが、活動の概要は把握することができた。こうした活動が学術情報として収集されたのは管見では少数に留まり、撮影したフードカートの外観や文字化した詳細なメニューなどは一次資料として意義がある。 フードカートの活動はポートランド特有のものなのかどうか、先住民族との関わりはないかといった疑問を解消するために、比較の観点から近隣都市ワシントン州シアトルで短期間のフィールドワークを実施した。シアトルではフードカートを見かけることはなかった。著名なパイク・プレイス・マーケットだけでなく、先住民族のダンスと食事を組み合わせた観光メニューやゴールドラッシュの時代をイメージしたレストランの表象などの調査を実施した。都市空間を彩る「テーマ」の創出事例として重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の「テーマ」である「スローフード空間」についてはおおむね順調に調査が進んだ。ポートランドのフードカートについては、タイ、ベトナム、ドイツ、エジプトなど、街路が多彩な食文化の展示場となっていた。価格面だけでなく味の点でも人気があり、列ができるほど混雑するフードカートもあった。 地ビール醸造所については、地ビールの銘柄、醸造所の位置を把握するにとどまった。開催日が限定されるファーマーズマーケットの調査を優先したためである。ファーマーズマーケットはテンポラリーな開催ということで祝祭性を帯び、屋台だけでなくフードカートも使用されていた。荷台にピザ窯を積んだ改造を施すトラックもあった。 シアトルで観察したパイク・プレイス・マーケットの考察はフードカートとの比較で重要である。この観点に気が付いたことで、フードカート研究をマリノフスキー以来の「市場(Market)」に関する研究と接続する可能性が生まれた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きポートランドでの現地調査を実施する。フードカートについては初年度との変化に注意しつつ、ファーマーズマーケットなどを含めた「市場(Market)」論として考察する。また、現地滞在中にわかったことだが、フードカート運営者が料理を競い合うテレビ番組が放送されており、番組についてのより詳しい情報を収集する必要が出てきた。 次年度の「テーマ」は「コンパクトシティ空間」なので、ポートランド市の政策、交通機関のネットワーク、ロードバイクの利用状況などを調査する。 比較の観点からカナダ・バンクーバーでの短期調査も実施する。シアトルでは先住民族やゴールドラッシュを表象に用いた都市空間を観察できたが、アメリカ西海岸~カナダ北西海岸の都市空間を比較して考察できるように調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にも海外フィールドワークを実施するので残額を繰り越した。次年度の海外旅費として使用する。
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