研究課題/領域番号 |
18K01205
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
福岡 正太 国立民族学博物館, 人類文明誌研究部, 教授 (70270494)
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研究分担者 |
寺田 吉孝 国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (00290924)
藤岡 幹嗣 立命館大学, 映像学部, 准教授 (80351451)
笹原 亮二 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 教授 (90290923)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 無形文化遺産 / 文化財レジーム / 芸能の映像記録 / 硫黄島 / 徳之島 |
研究実績の概要 |
本研究は、無形文化遺産概念の普及や文化財行政の変化等を背景に、島嶼社会で民俗芸能の伝承に取り組む人々の実践における課題を明らかにしようとしている。特に、様々な知見の交換をうながし、対象への理解を深めるためのメディアとして芸能の映像記録をとらえ、その可能性を研究と伝承の両方に活かすことを目指してきた。本年度は、新型コロナ感染症の第7派と第8派の流行を注視しながら島での研究活動を再開した。ただし、比較的小規模な調査や集会の開催にとどめたため、さらに1年間研究期間を延長して、本来の研究計画の完遂を目指すこととした。 本年度は、本研究の成果を踏まえ、昨年度国立民族学博物館が制作したマルチメディア番組『徳之島の歌と踊りと祭り』を改訂して徳之島3町(天城町、伊仙町、徳之島町)の資料館等での公開をおこない、さらに映像による展示『島の芸能』のプロトタイプを制作した。前者では島の各集落の芸能の記録映像をインタラクティブに視聴できるのに対し、後者は解説付きの映像により、他の島の芸能と比較しながら徳之島の芸能への理解を深めるコンテンツとなっている。これらにより、利用者の関心や目的に応じて異なる映像の提示法をとることの有効性を今後確認していく。また、観光客等の受け入れを再開した三島村硫黄島では、八朔太鼓踊りの追加調査・撮影をおこない、映像の編集を進めた。今後、上映会等を通じて民族誌的な映像記録を研究や伝承に活用する可能性について探っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度以降、島の医療体制などを考慮し、島への訪問を控えてきたが、本年度後半から島での調査研究活動活動を再開した。この研究では、映像を媒介として、島の人々との知見の交換をおこなうことで、民俗芸能伝承の課題を探ることを目指しているため、計画していた活動の重要な部分の実施がようやく可能となってきた。ただし、当初の研究期間を延長しての実施となったため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、調査に基づく映像の撮影、およびそれらを編集あるいはコンテンツ化する作業、さらにそれらを現地で利用可能とする体制作りを進めた。最終年度には、徳之島3町の資料館等において、インタラクティブに映像を視聴するマルチメディア番組の公開を続けるとともに、映像展示『島の芸能(仮)』をおこなう。また、三島村硫黄島においては、本研究にて制作を進めている民族誌的な映像作品の上映会をおこなうとともに、これまでの研究の成果に基づき国立民族学博物館の特別展『日本の仮面―芸能と祭り(仮)』の1セクションにおいて八朔太鼓踊りとメンドンの展示をおこなう。これらの活動を通して、それぞれの島の民俗芸能伝承における課題の整理に努めたい。映像コンテンツの活用を実現するには、まず、利用者、特に島の芸能の伝承に力を尽くす人々の経験にできる限り添う必要がある。上映会などの機会を作り意見を交換することで、彼らが島の芸能の伝承において課題と感じていること、またその解決のために映像を活用する可能性についての議論を、硫黄島と徳之島の両島において深め、共通の課題および独自の課題を明らかにする。また、硫黄島においては、八朔太鼓踊りに登場するメンドンの無形文化遺産代表一覧表への記載の影響、そして徳之島においては、世界自然遺産への登録と連動する文化遺産への意識の高まりなども注視し、民俗芸能の伝承への取り組みへの意識の変化にも光をあてる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度前半までは、島における調査等の活動や規模の大きな研究会の開催を自粛したため、使用を予定していた旅費等の経費が未使用となり次年度使用額が生じた。状況をみながら、再度、島における映像上映や意見交換の会、およびシンポジウムの開催を計画し、本年度未使用となった経費をあてていく計画である。
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