研究課題/領域番号 |
18K01206
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研究機関 | 新潟県立歴史博物館 |
研究代表者 |
大楽 和正 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20526959)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ローカル商品 / 伝統食 / アクション・リサーチ / 博物館学芸員 / 応用研究 / 海藻 / 納豆 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ローカル商品や伝統食をめぐる動きに博物館学芸員が積極的に介入し、それにかかわる多様な人びととの協働を通して、地域文化の持続や活性化を図り、地域社会に変革をもたらすことにある。 今年度は博物館学芸員である研究代表者が「越後えご保存会」の活動に一員として参加し、会員とえご食文化に関する知識を交換・共有した。具体的には同会で毎月開催する会員同士の情報交換会に出席して講演を行ったほか、毎月発行の会報にえご漁や食文化に関する情報を連載寄稿した。えご食文化を普及啓発するための社会実践として、保存会会員の協力を得て、試食及び調理体験をともなう形式での講座を長岡市と柏崎市で開催した。 会員有志との協働でえご漁や食文化に関する現地調査を実施した。調査の折に現地で採集した海藻サンプルについては、新潟大学海藻学研究室の協力を得て、海藻種の分類・同定分析を実施。その結果、えご草として現地で認識されている柏崎市笠島の「オバエゴ」、佐渡市の「ケイゴ」、糸魚川市藤崎の「イギス」の呼称をもつ海藻は、すべて「アミクサ」であった。次年度以降は、別種の海藻をエゴノリに混和させる調理法が各地に伝承されている背景について明らかにすることが課題となる。 食品としてのえごの味を第三者に伝達するための試みとして、人間の五感による官能評価と、測定機器を用いた物性値測定の分析を行った。これは保存会会員が独自に動きまわって着手した試みで、新潟県水産海洋研究所の協力を得て分析を進めている。日本酒の味わいが淡麗辛口などのチャート図で示されるように、最終的には各地に伝わるえご食文化の特性を消費者に向けて視覚的にわかりやすく表現することが当面の課題である。えご食をめぐる動きが、保存会や博物館の活動の枠を越えて、各方面に波及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海藻の同定や食品分析を調査に加える発想は当初計画していなかったものの、博物館での集い、そこでの深い学習が、新たな知の生産につがっている。
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今後の研究の推進方策 |
えご漁や食文化に関する調査研究を継続するとともに、2020年に予定されている越後えご保存会主催のPRイベントの開催に向けて協働で準備を進め、えご食文化の活性化を図っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査のための旅費、調査記録に必要なカメラ等の機器購入に使用する計画である。
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