最終年度に必要不可欠であったフランス出張は、2022年9月初旬にようやく実現が叶った。パリ・キュジャス図書館において、本研究の主要部分に深く関係するSociete d’etudes legislativesの議事録を参照した。新型コロナウイルス感染症に伴う制限も撤廃されていたこともあり、限られた時間ではあったが、国内においてアクセスしえずにいた巻のすべてのページの撮影ができた(当然ながら利用規則を遵守し、適式に許可を得た)。 分析を進めたが、想定に反して、同団体における1920年代における財団法の再検討は必ずしも活発なものとはいえないことがわかった。それでも、本研究が着目するDemogueの財団観の析出には有益な史料といえる。とりわけ、1930年代の国際会議における彼の信託論(この文献については若手研究者からの示唆を得た。御名前は挙げずにおくがここに記して謝意を表する)との比較が可能となった。 以上のように最終年度になすべき活動を着実に行うことができたといえる。しかし、直接的な成果の公表は達成できていない。秋以降の渡航制限緩和により、延期されていたフランス人研究者との企画が相次いだことが響いた。それでも「特種な契約」をテーマとした研究集会での報告において、また、オンライン参加であったが北海道大学法理論研究会・民事法研究会での報告(昨年度実績に記した夫婦財産法に関する共著本の解題)において、本研究の基層的課題である資産(patrimoine)の概念について分析を深めることができた。
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