最終年度に当たる本年は、これまでの研究の総まとめとして単著『子どもの意見表明権の保障――家事司法システムにおける子どもの権利』を出版した。本研究の課題は、面会交流の実効化のために法的社会的な課題を明らかにし、その解決の道筋をつけるというものであるが、研究の経過の中で、子どもの視点からこの問題を捉え、子どもの思いや気持ちを大切にしながら、その実効化を図るという方針を打ち出した。その視点を明確に打ち出したのが、本書である。本書により、第35回尾中郁夫・家族法学術奨励賞を受賞した。 また本年は、子どもの監護・面会交流の決定と実施を支える法的社会的プロセスについてのアメリカでのフィールドワークの成果を論文として公表した(原田綾子「DV保護命令と子の監護」。また「カリフォルニア州における子どもの監護の決定プロセス」と題する論文を執筆し、すでに脱稿済み)。他にも、Historical Development of Japanese Family Law and Family Policyと題する英語の論文を執筆し公刊されている。この論文においても日本の離婚紛争の問題について論じている。 さらに、本年は、いくつかの研究会報告と学会での報告を行った。日本家族〈社会と法〉学会では「コロナ禍と家族――法と社会の観点から」と題する報告を行い、この中でコロナ禍の行動規制における面会交流の問題について取り上げた。また、国際家族法学会(International Society of Family Law)では、離婚紛争における子どもの意見表明権の保障について報告を行った。
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