研究課題/領域番号 |
18K01212
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 史人 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50350418)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロシア / 憲法裁判 / 憲法アイデンティティ / 独裁 / 権威主義 |
研究実績の概要 |
本年度は、ロシアにおける権威主義化を促す背景として「危機の常態化」という観点に着目し、C,シュミット、ロシター、メドゥシェフスキーの独裁論について検討を行った。また、ロシアおよびハンガリーにおいて立憲主義の後退状況が、周期的で曖昧な「危機」の到来とともに進行する過程を跡づけた。 権威主義体制下におけるロシアの憲法裁判の状況を比較法的に検討するための素材としてハンガリーを取り上げ、以下の諸点に関するロシアとハンガリーの動向を比較分析した。すなわち、両国の憲法理論および判例における①社会権の位置づけ、②LGBTの表現の自由規制、③コロナ規制である。このうち②については、基本的な判例を検討し、全体的な問題状況を把握することができた。一方、①については、学界および判例の基本傾向を抑えるにとどまり、ロシアにおける社会権をめぐる憲法裁判の総体的な検討までは至らなかった。このほか、ロシアにおける権威主義化の一側面としての表現の自由規制における近年の状況を確認すべく、2012年に刑法典に導入された領土割譲煽動罪(280条の1)の裁判実務を分析し、当局の一罰百戒的な運用のもと、同罪が厳罰主義的に運用されていることを明らかにし、ロシアの対外・軍事政策について、許容される言論の幅が著しく収束している状況を確認するとともに、その成果を北方領土に関する講演会において紹介した。 また、本年度の研究成果の多くの部分は、10月に行われた全国憲法研究会の終期研究総会の招待報告において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ロシアとハンガリーの比較検討を行い、一定の成果を上げることができた。他方で、新型コロナウイルス感染拡大が引き続き影響し、現地への渡航が不可能になることで、予定していた研究の一部を進めることができないなど、一定の影響を引き続き被ることになった。この点は、ハンガリー憲法の分析に特に反映している。また、経済・社会領域における憲法裁判所の活動の分析についても基本的な特質を把握することはできたが、なお部分的なものにとどまっており、研究をとりまとめる段階には達することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、本年度に完遂できなかった経済・社会領域における憲法裁判所の活動の分析をすすめる。第二に、ロシア憲法の動態を相対化する観点から、ハンガリー憲法の動向分析を引き続き進める。第三に、本年度は本プロジェクトの最終年度にあたるため、研究成果のとりまとめを行う
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度内に研究をとりまとめるに至らず、そのために必要な物品購入の余地を次年度に確保するため。
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