現在のロシアでは、権威主義的政治体制のもとで、憲法裁判所が積極的に活動している。かかる状況は、従来の研究で援用されることの多かった「移行論」的視角では十分に説明できないものであり、欧米やロシアでもこの角度から憲法裁判所を包括的に扱った研究はない。本研究は、こうした領域に光を当て、権力分立など憲法裁判所が本来の役割を実現できない領域や、権威主義体制を正当化する役割を果たしている領域が存在することを確認する一方で、憲法裁判所が、通常裁判所の法解釈・適用の改善など一定の領域では今なお積極的な役割を果たしていることを明らかにし、民主化と法の支配の進化の関係性について一定の示唆を与えるものである。
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