研究課題
基盤研究(C)
中国では犯罪に起因する損害賠償は、そうではないものと区別される。その主な違いは、前者は最高人民法院により慰謝料を含まないとされていることである。こうした違いをもたらす実質的理由としては、①有罪認定・科刑には精神的苦痛を慰撫する機能があり、しかも慰謝料に優越する地位を与えられていること、および②判決における賠償額を抑えてその実現可能性を高めるとともに、判決よりも高額となることが見込まれる調停を促進して被害者等の満足を図り、もって社会の安定を維持するという政策的考慮が考えられる。
中国法
民事と刑事の区別・関係は法システムの根幹をなす問題である。その具体的なあり方は国・地域や時代によって異なり得る。この点に関する日中間の隔たりは大きいが、中国におけるその具体的なあり方についてはこれまで十分には明らかにされていなかった。本研究は慰謝料を素材として、そのあり方を具体的に解明し、またそうしたあり方をもたらす実質的理由を明らかにした。これらの点で、本研究には重要な学術的意義があると考える。