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2020 年度 実施状況報告書

事実認定的な法的言明の意味論と法的事実の存在論

研究課題

研究課題/領域番号 18K01217
研究機関神戸大学

研究代表者

安藤 馨  神戸大学, 法学研究科, 教授 (20431885)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードフィクション説 / 法的推論 / 事実認定 / 法概念論 / 法実証主義
研究実績の概要

率直に言って、コロナ禍の影響はとりわけ研究の公表に関して本研究においても避けることはできなかった。しかし、とりわけ法的事実の変動、すなわち過去を含むある一定の時点における法的関係に関する法的言明の真理値が時間的に変動するという事象についての理解の深化が得られた。この事象を説明するやり方は、ひとつには(過去を含むある一定の時点についての)法的事実なるものをその都度現在の決定によって構成されるものとみる(容易にフィクション説へと至るような)構成主義的モデルであるが、このモデルに対する疑念が容易には晴らされえないことについては昨年度までに明らかにした。今年度においては、更なる2つのモデルがあることを見出した。その第1は認識論的モデルである。たとえば、時間の経過によって変動する我々の認識的地位を反映し「○○と信ずることが合理的である」といった言明の真理値は時間的に変動する。「○○だということにして判決を下すことが裁判官にとって適法である」も同様のものとして捉えることができる。実際、裁判官が事実認定において拘束されるところの規範は少なからぬ部分が認識的規範であるからである。当然、普通には認識的とはいい難い規範によっても裁判官は拘束されるのだが(たとえば民事における弁論主義)、近時の認識的正義 Epistemic Justice を廻る議論からすれば、それらをも認識的規範に包摂しうるであろう。第2のモデルは、法的関係(権利・義務関係)を、責務主体・責務の相手方・対象行為のみならず、時点(より正確には期間)をも被関係項に本質的に含むとするものである。この場合、AがBに対しφという行為を為す責務を期間Pにおいて有することは「『AがBに対しφという行為を為す責務を有する』は期間Pに於いて真である」は導けない。法的事実の変動なるものは、後法優越的に法的関係が変動するということそのものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「法的事実」をフィクション説的に理解することが、法的言明が行為の(とりわけ国家の強制的行為の)正当化に用いられることを説明し得ない、という前年度までの結果を踏まえ、この説明的要請と両立可能な「法的事実」のモデルを複数見出すことができた。今後、これらのモデルの成否を検討し、その理論的優劣を明らかにすることで、本研究の目的が達成されることになるから、そのために必要な研究の進展を得たものと考える。

今後の研究の推進方策

最終年度である次年度には本年度の結果を踏まえ、事実認定的な法的言明の意味論、そしてそこで裁判官が(また一般人が)どのような行為に従事しているのかを包括的に説明しうる理論枠組を提出することを目標とする。なお、本年度を支配したコロナ禍の影響の下で、前年度に続き、海外学会・ワークショップでの報告など研究成果の公表という点については甚だ不満の残る結果となった。次年度については研究成果の公表に関して代替的手段を模索することとしたい。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍によって、旅費や、また主として海外からの輸入によっている欧文書籍の入手に充てられている物品費の使用に大きな影響が生じたため。前者については予断を許さないが、後者については状況が改善しつつあるので、次年度に併せて使用・執行の予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 死の害と死後の害2020

    • 著者名/発表者名
      安藤 馨
    • 雑誌名

      論究ジュリスト

      巻: 32 ページ: 133-143

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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