• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

法務と訟務の乖離-中世後期イングランドにおける"rape" 民事侵害訴訟-

研究課題

研究課題/領域番号 18K01225
研究機関駒澤大学

研究代表者

北野 かほる  駒澤大学, 法学部, 教授 (90153105)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード中世後期イングランド社会 / rape / 民事侵害訴訟(rapeの) / 婚姻継続困難被害申立 / 民事離婚(教会法によらない) / 重罪私訴 (rapeの) / 正式起訴(rapeの)
研究実績の概要

コロナ禍による海外渡航・滞在・調査の困難*のため、昨年度に引き続き日本国内で可能な範囲で、主にウェブ提示の原典写真サイトAnglo-American Legal Tradition http://aalt.law.uh.edu/ による手書の裁判記録集の縦覧・事例抽出・データ作成作業を継続した(調査対象である年4回作成の『王座裁判所裁判記録集』Plea Rolls of the King's Benchほぼ2年分**)。判明した傾向・時間経過による趨勢に従来の調査結果と大きな差異は認められない。ただし事例の集積により、当初の仮説である「中世イングランドにおいては夫による妻のrape の民事侵害提訴が事実上の婚姻継続不能の主張である可能性が高い」ことの裏付けは一層明確になったと考えている。
* 所属機関長に計画を提出して渡航許可を得る必要があり裁定までに要する期間を読込む立案が必要であること、渡航先英国の入国制限状況・経過観察期間設定が不安定でしかも新型変異株流行状況が日本に比して激烈で帰国直後の職務復帰困難が予測されるなど。
** 一開廷期あたり平均して羊皮紙500葉の表裏面を縦覧するため、一記録集に完全に目を通すには授業期間中だと最低で2ヶ月を要する。
並行して作業を進めている『人民訴訟裁判所裁判記録集 Plea Rolls of the Common Pleas』を用いた自主研究『中世イングランドにおける非訟事件記録』について調査を進めた結果、そこに「いわゆる民事離婚」関連の記録は一切登場しないことが一層明確になった。これについては、同裁判所の非訟事件記録例についての研究結果を公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

海外で調査するしかない主にカンタベリ大司教区の教会裁判記録について、すでに、中世に当該裁判所Court of Arch があったロンドン司教区の教会関連記録保管資料館であるランベス図書館には、中世の記録がほぼ残っていないことは確認済みである(当時の教会裁判記録は、裁判所が機関として保存するのではなく、在任中の司教が職務上保管するものであったため、転任のための出入りが比較的頻繁だったロンドン司教区については、調査対象期間に在任していた個々の司教が保管していた各種記録:一部は発見されて転記刊行されているが、必ずしも数はおおくないうえに、一連の聖職者保管記録刊本は日本国内には整備されていない。イギリス公文書館所蔵の出版書籍類にも該当書はなく、編集刊行元であるロンドン大学歴史研究所の蔵書を調査する必要がある)。
これらついて、カンタベリ大司教座教会に残っている可能性がある原典記録およびロンドン大学歴史研究所蔵書を現地調査する予定でいたが、海外渡航困難のためこれを実施することができなかった。

今後の研究の推進方策

今年度は海外渡航調査について比較的余裕を持って計画を立てることができるため、上記研究進捗遅滞理由である現地調査に相当の期間を割いて、王の裁判所記録集記載の主要調査結果と、教会裁判所のとりわけ婚姻関係訴訟記録の調査結果を照合し、中世イングランドにおける「教会法上の婚姻継続不能判定」と「いわば民事離婚による婚姻解消手段」との趨勢の異同(仮設ではむしろ対応のなさ)についての調査検討を進め、少なくとも15世紀前期におけるそれぞれの制度/慣行の趨勢について一定の結論を出したい。

次年度使用額が生じた理由

予定していた海外渡航調査が実施できなかったため。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (5件) (うちオープンアクセス 4件)

  • [雑誌論文] 中世イギリスの非訟事件記録 : 15世紀初期リキル家の継承財産設定の場合 (1)2021

    • 著者名/発表者名
      北野かほる
    • 雑誌名

      駒澤法学

      巻: 20-3 ページ: 1-33

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 中世イギリスの非訟事件記録 : 15世紀初期リキル家の継承財産設定の場合 (2)2021

    • 著者名/発表者名
      北野かほる
    • 雑誌名

      駒澤法学

      巻: 20-4 ページ: 35-69

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 中世イギリスの非訟事件記録 : 15世紀初期リキル家の継承財産設定の場合 (3)2021

    • 著者名/発表者名
      北野かほる
    • 雑誌名

      駒澤法学

      巻: 21-1 ページ: 1-32

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 中世イギリスの非訟事件記録 : 15世紀初期リキル家の継承財産設定の場合 (4・完)2021

    • 著者名/発表者名
      北野かほる
    • 雑誌名

      駒澤法学

      巻: 21-2 ページ: 1-41

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] [史料紹介[ 中世イングランドの非訟事件記録―イギリス中世手書史料閲読雑感―2021

    • 著者名/発表者名
      北野かほる
    • 雑誌名

      法史学研究会会報

      巻: 24 ページ: 143-170

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi