研究課題/領域番号 |
18K01226
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
佐藤 信行 中央大学, 法務研究科, 教授 (40274948)
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研究分担者 |
伊藤 壽英 中央大学, 法務研究科, 教授 (90193507)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 日本法 / 英語による情報発信 / 英米法 / グローバル化 / 法の支配 |
研究実績の概要 |
日本法の英語での情報発信における課題の一つは、common law法系の制度と不可分に結合している「common law言語たる英語」によって、相当程度に異なる法制度である日本法を如何に表現するかという点である。 そこで、2018年度においては、研究代表者(佐藤信行)と分担者(伊藤壽英)の両名がロンドン(英国)における法曹養成機関の一つであるミドルテンプルを訪問し、外国法たる日本法の基礎的用語について、どのような英語表現をすることが適切化について聞き取り調査及び意見交換を行ったほか、同様の聞き取りを、ミドルテンプル以外の法律家からも行った。 一例として、日本法の「契約」という概念は、社会的機能としては英法の"contract"と同様ものがあるといってよいが、法制度の視点から見ると、その形成方法(契約の法律要件(成立要件)とcontractの法律要件など)には、単なる技術的違いを超えた差違が認められ、それが契約法文化の違いの背景ともなっている。そこで、「契約」という日本法の法律制度を英語で表現する場合には、"contract", "agreement"あるいはそれ以外の表現が考えられることになる。問題は、その使い分けが、英語話者(これには、英法に知識のある英語話者と、そうではない者が含まれる。)にどのように受け止められるかということであるが、これまでは主として、日本法に通じた日本語話者が「文脈による」あるいは「状況による」として、経験的(換言すれば、非定性的・非定量的に)使い分けを行ってきた。 今般の聞き取り調査では、英法に知識のある英語話者による受け止め方を調査し、「common law 言語」が予想よりは強くないことが理解された一方で、"agreement"の方が正確に意味を伝える可能性が高いことが理解されたほか、他のいくつかの用語・概念についても一定の成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の初年度であった2018年度においては、研究実績の概要に記載のとおり、本研究の方法論的基盤となる点について、専門家の協力を得て一定の成果を挙げることができたことから、「(2)おおむね潤著に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の成果を踏まえて、本年度以降は、「common law言語としての英語」たる性格を不可避に有する英語で日本法を表現した場合に、誤解や混乱を招きやすい用語・事例を蓄積し、そこから適切な英語による日本法情報発信を行う基盤構築に向けた作業を行う。 具体的には、上記用語・事例のデータベース化、とりわけこれまで「文脈依存」「状況依存」といわれてきたことの実体を可能な限り可視化し、論文やデータベースを用いて成果として公表する。 なお、専門家に対する「聞き取り調査」が、研究方法として相当程度有効であったことから、本年度以降については、この研究手法を最大限活用することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度においては、もっぱら、ロンドン(イギリス)における聞き取り調査を手法として研究を行い、成果を得たことから、当初予定していた他の支出の一部を行わなかったため。文献調査等の他の手法による研究については、2019年度以降に実施する。
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