研究課題/領域番号 |
18K01228
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
耳野 健二 京都産業大学, 現代社会学部, 教授 (60271128)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ベートマン=ホルヴェーク / 自由 / 関係 / サヴィニー / 体系 |
研究実績の概要 |
・論文「モーリツ・アウグスト・フォン・ベートマン=ホルヴェークの法思想における<自由>と<関係>――「形式的自由」の導入をめぐって」(1)(2)を発表した。論文としては未完であるが、さしあたり以下の点を本稿の成果としてあげることができる。第一に、ベートマン=ホルヴェークという重要な法学者を邦語文献としてははじめて詳しく論じた研究であること。第二にベートマン=ホルヴェークの生涯は、研究活動に着目すると前半期(1810年~1840年)と後半期(1862年~1877年)に分けることができ、そのいずれにおいても、独自の哲学的考察が行われていること。とりわけ、歴史法学派の一員としてサヴィニーとの緊密な関係にあったにもかかわらず、つねに独自の立場を模索しており、それは法の哲学的基礎付けにも見られる。とりわけ注目に値するのが、法体系の基礎づけの理論である。第三に、前半期の三つのテクストについて法の哲学的基礎付けを明らかにした。すなわち、1832年には二つの自由概念、法による自由と「最高の自由」がみられ、1838年には法を愛と同一視し、人間と神の共同体の形成の必要性が説かれ、1840年には法体系の基礎として「関係」が取り入れられている、ということを確認した。 ・次に、石部雅亮「立法の思想史――一八世紀後半から一九世紀末までのドイツ――」(『法の理論』34所収)に対する書評を発表した。本論文は、18世紀における啓蒙主義の影響下による法と国家のありようを起点に、現代法システムの成立までを遠視しつつ、19世紀ドイツにおける法思想を要約的にまとめたものである。本論文がきわめて高い完成度をもつことから、書評では、類似テーマを扱った古典的論文「磯村哲「啓蒙期自然法論の現代的意義」(1956年)」との問題意識の関連性を指摘することで、読者に対して、わが国の近代法史研究の歴史への注意喚起をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で明らかにしようとする主題の第一点「サヴィニーの見解の最も深い理解者であったベートマン=ホルヴェークの法思想をサヴィニーの法体系論と関連させつつ分析する。」を現在遂行中である(上記「研究実績」中の論文)。ベートマン=ホルヴェーク自身がサヴィニーに劣らぬ巨大な業績を残しており、分析にはある程度の時間が必要であるが、すでに本主題の分析のための基礎的な概要を検討し終わっている。
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今後の研究の推進方策 |
・研究計画書の「本研究で明らかにしようとする」主題の第一点、「サヴィニーの見解の最も深い理解者であったベートマン=ホルヴェークの法思想をサヴィニーの法体系論と関連させつつ分析する。」の成果を論文として発表してきた(上記「研究実績」中の論文)。本論文が未完であることから、まずはその作業を継続し、論文の完結を試みる。 ・次いで、これに並行して、研究計画書の「明らかにしようとする主題」の第二点、「グスタフ=フーゴーによるカント認識論(近代的system概念の定礎はカント『純粋理性批判』に由来する)の受容の問題(フーゴーは法学の側からカントの認識論と法論を受容した)、1830年代のシュタールとプフタの法システムの基礎づけをめぐる論争、そして19世紀後半のビーアリングの著作におけるサヴィニーの法システム概念の受容とその意義」についても着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に購入予定であった書籍が版元在庫切れであったため、2019年度に改めて資料収集の計画を練り直す必要があるため。
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