研究課題/領域番号 |
18K01228
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
耳野 健二 京都産業大学, 現代社会学部, 教授 (60271128)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ベートマン=ホルヴェーク / サヴィニー / 法概念 / 法学方法論 / 分析 / 総合 / 構成 |
研究実績の概要 |
今年度は、①フーゴーの法哲学の分析、②シュタールとプフタの論争の分析、についてテキストの読解を行うと共に分析作業に着手した。また③ベートマン=ホルヴェークの法体系論の続きを執筆した(拙稿「モーリツ・アウグスト・フォン・ベートマン=ホルヴェークの法体系の理論(1)」の続編)。ここでは、以下の点が明らかになった。 ベートマン=ホルヴェークは、法概念の導出方法として「分析的手続」と「総合的手続」の対比をあげ、前者をティボーの見解に、後者をサヴィニーの見解に見ている。「分析的手続」とは、法概念を単なる二分法により分類することで法の各領域を区分する手法である。ベートマン=ホルヴェークによれば、この方法は「構成的指標」を欠いている。これに対して、「総合的手続」は「構成的指標」に基づいて法の各領域を区分する手続である。 「構成的指標」とは、人格と物の関係、ならびにかかる関係の他人による承認のような「世俗的関係」のことである。つまり、現実世界に由来する何らかの「関係」を参照することで、法領域の区分が行われ、それに応じて法の各領域が形成されるべきだと、ベートマン=ホルヴェークは考えていた。ただしそのような「関係」は、裸の経験として得られるのではなく、「人間の理性的意思」に基づいて「倫理的関係」、さらには「法関係」として把握される。このような「法関係」を基盤として、ベートマン=ホルヴェークは、法の基本的な領域として、「人格法」「財産法」「家族法」「国家法」を設けている。以上のことから、ベートマン=ホルヴェークの構想する法体系は、いずれの法領域においても人間が形成する何らかの「関係」が基盤となっていることが分かる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
引き続き、本年度は「サヴィニー、ベートマン=ホルヴェーク、プフタ、シュタール、フーゴーの各々のsystem概念について検討を進める」ことを予定した。いずれも検討に着手しているが、本年はベートマン=ホルヴェークの法体系論の分析の仕上げを優先した。引き続き、フーゴーのsystem概念の分析、さらにプフタとシュタールの論争におけるsystem概念の分析を扱う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ベートマン=ホルヴェークの法体系論の分析について一応の成果を得たので、今後は、まずはこれを公表する方向で仕上げを行う。ついでフーゴーの法哲学の分析を継続する。その進捗具合をみながら、順次、1830年代のシュタールとプフタの法システムの基礎づけをめぐる論争、ビーアリングの著作におけるサヴィニーの法システム概念の受容とその意義についても検討を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に当たって重要な基盤となる書籍の刊行が遅延しているため。具体的にはJoachim Rueckert, Idealismus, Jurisprudenz und Politik bei Friedrich Carl von Savignyの出版について、2022年2月と予告されていたものが、同10月に延期されることが出版社より告知されたため。出版が確認され次第、本書および関連書籍の購入を行う。
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