研究課題/領域番号 |
18K01230
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
藤田 政博 関西大学, 社会学部, 教授 (60377140)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 刑の一部執行猶予 / 刑罰の重さの心理学的評価 |
研究実績の概要 |
今年度は第1年度であったため、刑の一部執行猶予制度に関連する先行研究調査を中心に行った。先行研究調査の方法としては、文献調査を採用した。具体的には、関西大学の蔵書、購読している雑誌および雑誌データベースから刑の一部執行猶予制度に関連する文献を収集し、及びそれで不足する文献については他大学図書館からの取り寄せ、新規に出版された書籍の購入等を行った。収集した文献については精読するとともに、収集した文献のうち約140件についてデータベース化を行い、レビューを進めている。現在、レビュー論文の原稿を執筆し、最新の議論状況に基づいて心理学的問題点の洗い出しを行っている。 それと同時に、2年目の課題の先取りになるが、刑の一部執行猶予を含む刑罰の重さの軽重の判断に関する質問紙の作成に着手した。予め統計の専門家にアドバイスを得た上で、刑の一部執行猶予を含む刑の軽重を比較する質問項目のセットを考案し、質問紙の形にした。第2年度目以降に質問紙調査を実施するに当たり、刑の重さの軽重を適切に測定できるか、回答しやすいかどうかの検討を行った。ただし、実際に刑の軽重の主観的重さの測定に利用できるかどうかは、第2年度目以降の調査実施を待って、具体的データを用いて検討したいと考えている。 また、関連して、各種学会や研究会等の会合で法社会学関係者、刑事法関係者に面会し、最近の刑事法および刑事法関連の研究動向について話を聞いてアドバイスを受け、研究の進捗及び方向性について確認するとともに必要な修正を行い、研究の進行上必要な点についての手がかりを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本において「刑の一部執行猶予」をキーワードに含む文献について、入手可能なものについてはほぼ集めたと言える。そして、収集した文献の精読とそれを展望する論文にまとめている。展望するための論文執筆は進捗しており、刑の一部執行猶予制度を巡る研究状況はおおよそ把握できた。 先行研究調査の目的は、2年度目以降の調査の前提として研究状況を把握することであったため、当初計画上の目標は達成した。 その一方で、第2年度目の作業であったはずの質問紙作成には着手し、Word形式の質問紙の第1版ができている。今後、質問紙調査を試行してみて、その際の回答者の反応によっては改稿やさらなるデータ取得が必要となると思われるものの、すでに第1版が完成している点で大きな進捗である。最終的にデータをもとに刑の一部執行猶予を含む刑の軽重を比較するという本研究計画の目標からすると、余裕を持ってデータ取得に進むことができる。以上の状況に鑑みれば、全体として当初掲げた研究目標を研究期間内に達成するという観点からすると第1年度における研究進捗としては概ね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画のうち、先行研究調査については、研究状況を把握するという目標は達成した。現在、関連文献を精読しているが、その結果を学術的な成果として発信するべく、レビュー論文の完成を目指して引き続き原稿執筆を行う。 その一方で、すでに初版の完成した質問紙を試行的に実施し、質問紙作成時点で考えた刑の一部執行猶予を含む刑罰の軽重の主観的評価について測定できるかどうかを検討する。 以上について研究進捗を適切な方向を見失わずに進めるために、随時関連分野の研究者および法律実務家等にアドバイスをいただく。そのために、研究会や学会に出席するとともに、個別の打ち合わせ等を通じて研究の内容及び進め方について具体的事項の検討を行う。 第1年度で作成した、第1版の質問紙を用いて試行的にデータを収集していく。試行的に収集したデータについては、試行的な形ながら分析を加える。試行的な形であっても本研究で明らかにするべき治験の一部が明らかになった場合、学会報告等で対外的に成果を発信していくこととする。成果発信のために、準備が整い次第、随時学会発表を行う。発表によってフィードバックを得て質問紙の改良及び仮説・考察の改良を行う。それだけでなく、フィードバックを得た点について、今後の研究進捗上、取り組むべき課題の優先順位付けにも反映させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費からの支出と見込まれた学会出席旅費について、航空券代の支出につき、当該学会が開催決定された時点(1年前)で最も有利な航空券を確保するために、すぐに航空券をクレジットカードを用いて、研究代表者が私費で立替購入した。これは、なるべく安くかつ移動が容易なルートで航空券を確保するためであった。しかし、決済が行われたのが科研費の受給の最終決定前であったため、研究費支出における所属機関のルール上、科研費からの支出として認められなかった。そのため、航空券代相当の使用残が出た。以上の事態が確定したあと、使用残について必要な物品や書籍の購入等で研究費の使用を行ったが、2018年度中に当初予定の予算残額をすべて使用するには至らなかった。 2018年度に研究打ち合わせを行った関係者のうち、その打ち合わせの成果により、東京の実務家法曹・愛媛の刑事法研究者・国外の研究者等において、2019年度により緊密なアドバイスをいただける先が生じた。そのため、2019年度には、前年度使用残と今年度使用予定学を合わせた予算の範囲内で訪問回数を増やし、更に研究を進展させることを予定している。
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