研究課題/領域番号 |
18K01235
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
江原 勝行 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (60318714)
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研究分担者 |
高橋 利安 広島修道大学, 法学部, 教授 (50226859)
田近 肇 近畿大学, 法務研究科, 教授 (20362949)
波多江 悟史 早稲田大学, 法学学術院, 講師(任期付) (10792947)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イタリア憲法裁判所 / イタリアの違憲審査制 |
研究実績の概要 |
2018年度においては,研究代表者及び研究分担者各自の役割分担に基づき,以下の2点に集約される研究を行った。 (1)法律の合憲性判断の実体的枠組みについて アメリカやドイツにおける合憲性判断枠組みとは異なるイタリア独自の違憲審査の手法とは何かという点を解明するための前提的作業として,関連する判例・論文等の資料を分析した。具体的内容としては,次の3点を挙げることができる。第一に,イタリアの違憲審査制を特徴づける基本的手続に関わる研究である。すなわち,訴訟当事者による憲法問題の提起と通常裁判所による憲法問題の憲法裁判所への移送を受けて開始されるという具体的規範統制が憲法裁判所の主な権限行使形態として採用されたのはなぜか,それを制憲議会における議論を手掛かりに検討した。第二に,憲法裁判所による憲法判断の具体例として,2017年の新両院選挙法の成立に至る過程で,憲法裁判所の諸判決がいかなる影響を与えたかを分析した。第三に,憲法裁判所による憲法判断の2つ目の具体例として,イタリアにおける放送の自由の歴史的展開に憲法裁判所判決が与えた影響について研究を行った。ここでは,放送に対する規制を警戒するという視点と放送に対する市場の影響力に配慮するという視点とを調整するに至る,イタリア憲法裁判所の判断過程を明らかにすることができた。 (2)国内法と国際法の抵触関係を調整する法理について この点に関し,2018年度においては特にEU法に焦点を当て,EU司法裁判所の先決裁定と,それに対して異議を申し立てたイタリア憲法裁判所判決を素材とした研究を行った。その結果,EU法と国内憲法の基本原則との間に生じた抵触関係をEU司法裁判所が止揚する推論の過程(の一部),併せて,イタリア憲法裁判所がかかる抵触関係を前にして自国の憲法規範を優位させるための条件(の一部)を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者及び研究分担者各自による研究には一定程度進展が見られたが,その成果を共有するという点では不十分な面があったため。特に,イタリアの違憲審査制における法律の合憲性判断の実体的枠組み及び国内法と国際法の抵触関係を調整する法理に対する,より明確な認識・理解の共有を図る必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に引き続き,研究代表者及び研究分担者の役割分担に基づく研究を各自で遂行することに加えて,上記「現在までの進捗状況」欄に示された課題に対処するために,研究代表者と研究分担者による研究会ないし打合せ会において,各自の研究の進捗状況について成果と課題をよりいっそう共有することに努める。また,このような課題への対応を,憲法裁判の理論及び実務に精通したイタリアの憲法研究者と連携し,イタリア現地における関係諸機関への訪問調査を行うことによって補強する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,主に2つ挙げることができる。第一に,研究代表者及び研究分担者による研究会に,専門的知見の提供を受けることを予定していた国内の研究協力者を招聘することができなかったために,研究協力者に支払うことを想定していた旅費に剰余金が発生したことである。第二に,研究課題に関係するイタリア語資料を十分に収集することができなかったことである。 したがって,2019年度においては,研究代表者及び研究分担者による研究会を充実化させる観点から,国内の研究協力者を研究会に招聘し,そのための旅費として次年度使用額の半分程度を充当する。次年度使用額の残りの半分程度については,研究課題に直接関連するイタリア語図書の購入費に充当する予定である。
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