研究課題/領域番号 |
18K01245
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高橋 祐介 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50304291)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 徴税漏れ / Tax Gap / デジタルプラットフォーマー |
研究実績の概要 |
本研究は、新たな決済システムが発展しつつも現金が決済手段の約8割を占める日本社会の特殊性を前提に、近時のデジタル・エコノミーやクレジットカードなどの取引決済にみられる事業者への情報集約現象やリアルタイム処理のクラウド会計システムなどに着目して網羅的・目的限定的に情報を取得することにより、徴税漏れ(Tax Gap)を縮小しつつ、当該情報の適切な加工・利用を行う法的システムを構築することを目的とする。 本年度は第1年度から3年度にかけての成果を活かしつつ、具体的な最終制度モデルを提示することを念頭に置いた。コロナ禍によりIT環境の進展がなかば環境的に強制された側面もあり、本研究の計画立案当時とはIT環境が大幅に様変わりした。COCOAなど匿名化された公的情報の枠組みすら確立しつつあり(COCOA自体の成否は置く)、事業者からの情報提供枠組みについても、既存の税務調査のそれを拡大する形で対処が図られることとなるなど、研究当初の予想とは異なる社会状況が生じ、またインターネット上で個人情報や取引情報をやりとりすることについて、社会的な「慣れ」が生じてきたように思われる。 当年度は地方税を中心とする地方公共団体の情報流通に着目する形でモデル構築を考えたが、上記の社会的な慣れを踏まえると、マイナンバー制度の利便性向上、情報突き合わせ制度確立と情報監査制度の拡充、税務調査対象選定方法の明確化等の措置を講じた多元的公的情報流通制度の構築が好ましいのではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のため、当初予定していた国際的視点からの実地研究ができずにいた。昨年度の研究内容は、当初アプローチを変更する形(インターネット上の情報検索など)で研究を遂行したが、コロナ禍につき状況改善が見られることから、1年間研究を延長し、国際的視点からの研究に再度取り組みたいと考えている。 以上の点、特に地方税を中心とする国内的研究の遂行についてはおおむね当初計画を達成できたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はその研究機関を1年延長し、コロナ禍で影響を受けた部分、国際的視点からの研究の補完を試みたい。もとより実地対面インタビューなどが現在同様行えない場合には、インターネットを利用した遠隔調査に切り替えるなどの柔軟な対応を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、国際的視点からの実地調査に関する検討が行えなくなったため、その分の余剰が大きく生じたものと考えられる。 コロナ禍の状況によるが、可能であれば対面で、そうでなければ遠隔での研究実施を次年度に行う予定である。かつては人的交流に関して厳格な制限があったため、例えば全参加者について遠隔での研究会実施が主流であったが、少なくとも国内に関して人的交流に関する制限は緩和傾向にあり、遠隔対面併用の研究会が主流になりつつある。このような遠隔対面併用の研究会やミーティングが行われる場合には、遠隔限定・対面限定のそれらと比較して電子機器(多人数参加者向けのカメラ・マイク・スピーカー)の調達コストがかかる予定である。対面実地調査実施や研究会開催が今後も見通せない場合には、次年度使用額をこのような調達コストに充て、研究を実施する予定である。
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