研究課題/領域番号 |
18K01248
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松本 和彦 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (40273560)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 憲法 / 環境法 / ドイツ法 / 民主主義 / 法治主義 / 環境リスク / 予防原則 / 比例原則 |
研究実績の概要 |
本研究は、公法の視点から、環境リスク・マネジメントを規律する法的枠組みがいかにあるべきかを解明するため、反省法・学習法としての環境法の構造分析を行い、憲法学を中心とする公法学の基礎理論(とりわけ民主主義原理と法治主義原理)に遡って、そのありようを再検討するものである。併せて、科学的に不確実な状況下での環境リスク・マネジメントの過小性・過剰性に対処するため、予防原則と比例原則にも再検討を加え、その法構造を明らかにしようとしている。 本年度は、まず、民主主義理論や予防原則・比例原則に関して、昨年、日独の学会や研究会において報告した研究内容を、論文の形にまとめ上げて公表した。そこから、さらに発展させた研究内容(とりわけ予防原則論や環境権論)を日独の学会・研究会において口頭報告するとともに、テーマに関する論点をめぐって、他の研究者たちと意見交換した。その成果は、遅くとも来年度には、論文の形で公表するつもりでいる。 本年度の1月末から3月末までの2ヶ月間、ドイツ連邦共和国にあるベルリン・フンボルト大学法学部において、在外研究を行った。そこを拠点として、現地の研究者たちと意見交換を行ったほか、環境リスク・マネジメントに関する複数の研究書(たとえば、Hill/Schliesky (Hrsg.),Management von Unsicherheit und Nichtwissen)を集中的に検討した。その結果、不確実性下においては、予防原則・比例原則といった諸原理・原則の適用にあっても、動態的な過程の中で、反省し再考する順応的アプローチを取らなければならず、この順応的アプローチの解明が必要であるということが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の学会・研究会等で報告した研究内容は、本年度に論文にまとめて公表できたし、本年度の学会・研究会等で報告した研究内容は、来年度に論文にまとめて公表できる状態にある。比較法の対象として、主として、ドイツ法に焦点を当てた研究を行っているが、日独の研究者等との交流の場がしっかりと確保できていることに加えて、本年度は、研究期間の最後の2ヶ月間、ドイツの地で集中的に、日独比較研究を行うことができたため、研究最終年度である来年度に向けて、弾みをつけることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の最後の2ヶ月間、ドイツ・ベルリンの地で集中的に取り組んだ環境リスク・マネジメントの複数の研究理論書をさらに分析検討し、自らの研究も含めた日本の従来の研究成果と摺り合わせて、公法学の基礎理論(とりわけ、環境リスク・マネジメントの順応的アプローチ)の構築に貢献するとともに、並行して検討を進めている環境権論の研究との共通項を抽出し、権利論の視点も加えた研究として、論文にまとめ上げたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
為替変動の結果、購入した洋書の代金が、当初の予定よりも少しだけ変わってしまったため、6円余ってしまった。この金額は次年度の図書購入費に充てたい。
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