研究課題/領域番号 |
18K01250
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福永 実 広島大学, 人間社会科学研究科(法), 教授 (10386526)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 制定法解釈 |
研究実績の概要 |
本研究は,行政機関が行う行政法解釈,即ち行政解釈(agency statutory interpretation)の方法論について,アメリカ法における議論の諸相を検討し,もって日本法への示唆を得ようとするものである 。 アメリカ公法学説ではここ30年ほど,多様な法分野の学者によって制定法解釈方法論が盛んに議論されているが,裁判所の「行政法」解釈方法論については(Chevron法理分析を除き)目立った議論はない。しかし近年,公法学者の一部で「行政解釈方法論」についての議論の集積が見られる。学説上では,解釈者を裁判官ではなく行政機関に措定した場合の制度論的相違に軸足を置く制度論モデルが主流の議論である。ただ私見では,立法者との関係性に軸足を置く規範論モデルも十分に成立する余地があると評価し,そこから行政解釈方法論には行政機関の統制という固有の目標が存在し得るのではないか,との結論を得た。 次に,上記の過程で得た分析枠組みを参考に,我が国での行政解釈方法論の課題と展望について若干の検討を行った。まず,行政解釈方法論が司法解釈方法論とは別に成立する余地があるのか,という同論の基本論点について肯定の結論を示した上で,我が国でこれまで指摘されることがあった行政解釈の方法論(林修三・渡辺洋三・田中二郎など)を個別に検討し,そこでの課題が司法解釈の場合と異ならないことを確認した。その上で,行政解釈方法論の固有の構成の可能性として制度論と行政統制論の観点も加味し,具体的な方法論として,主観的解釈を原則としつつ客観的解釈に移行する場合の説明責任を政治部門に課すとの試案を,近年の法解釈方法論の議論を参照しつつ示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の文献収集と分析に基づく基礎研究を経て,2年目は論文執筆に入ることができ,3年目にはアメリカ法分析と,これを受けた日本法分析の論考を2本公刊することができた。 しかし,2年目に予定していた海外調査は,コロナの影響で断念し,その後も同様の結果となった。研究が文献調査にとどまっており,研究成果について海外研究者のレビューを踏まえた完成を見ておらず,引き続き後続論文を補充的に執筆する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
合衆国最高裁が緩やかにテクスチュアリズム志向を強める中,学説上,解釈準則論への着目志向が顕著に高まっている。今後は解釈準則論などの研究を補追しつつ,海外調査が可能になれば,その成果を取り入れる研究計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なコロナウィルスの蔓延のため,外国での資料調査及び国内での研究打ち合わせのための費用が使用できなかった。混乱回避後に外国での資料調査及び国内での研究打ち合わせのために研究費用を利用する。
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