研究課題/領域番号 |
18K01251
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
手塚 貴大 広島大学, 社会科学研究科, 教授 (50379856)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 税務行政と情報 / 税務行政の情報収集 / 財産評価行政の効率化 / 税務行政と租税法律主義 |
研究実績の概要 |
本年度は、税務行政の個別問題を扱おうとし、とりわけ課税庁にとっての行政活動上の情報の意義を検討することとした。まず、ドイツの財産評価法の改正問題を検討し、財産評価という行政上の事務負担がかかる作業の簡素化のための制度改正を調査した。そして、以下のような知見と成果を差し当たり得た。従来ドイツ不動産税の課税に際しての財産評価は、事務負担のために評価替えがなされてこなかったところ、評価の適正性の点で問題視されていた。その問題を解消するべく、制度改正がなされた。特に、建物評価に際して膨大な情報を集めるのではなく、不動産取引・評価といった他分野でも利用されている既存の情報を用いることにより、情報創出・収集の負担は大幅に削減される。これは、租税法上の財産評価に際しては、個別財産の精確な価額を徹底して追求するのではなく、合理性のある評価方法であれば評価のあり方として是とされるという事情にも基づくと思われる。税務行政の制度設計に対して示唆的な実体法上の根拠を探求し、その上で税務行政上の効率性を追求するというそうした制度設計がありうるのである。また、他分野の情報を電子的方法により収集し、課税上利用するべく結合するというインフラも重要な効率的税務行政のあり方であると考えられえる。 また、課税庁による私人の取引の税務否認のあり方についても、私人にとっての税務行政作用の持つ侵害的効果を踏まえつつ、租税法律主義との関係を念頭に分析する作業を行った。 その他にも、租税手続一般の改正に係る文献の分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
税務行政の効率性理論的に追及する作業を行うに際して、個別分野における法制度を検討することによって、効率的税務行政の具体像を析出することが可能になると考えていたので、本年度はその作業を租税法における財産評価の作業を具体例として検討することができた。そこでは、租税手続の意義として、実体法上の制度の企図するところを実現することを挙げることができ、そうした視点から効率的にかような目的を実現する制度設計のあり方を検討することができたという点では一定の成果を得られたと考えている。その際に、税務行政における情報の持つ意味も併せて検討できたということも付言できる。適切な情報を如何にして効率よく収集・加工・利用できるかは税務行政の効率性に大きな意義を有することを具体的に確認できた。さらには、前年度に引き続き、租税法律主義の枠内において、課税庁が機能的に(換言すれば効率的に)執行作用を担うことの前提条件を探る作業を継続することもできた。 加えて、前年度に行った学会報告に対するコメントも学会誌に公表し、さらには、税務調査のあり方の一端に係る解釈論に関する判例評釈も公表することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後においては、今までの研究により得られた知見を論文の形式で公表することを行っていきたい。特に、税務行政の効率化に資する制度改正の研究を、ドイツ租税通則法に係る租税手続法に係る議論を踏まえつつ継続し、その成果も論文の形式で公表することとしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外出張を計画していたが、新型コロナウィルスの関係で、出張を自粛した。したがって、2020年度において全額を計画的に使用する予定である。
|