今年度は研究期限を延長した最終年度であり、収集したドイツ行政法・租税法に関する資料を読了し、研究期間中に公表した成果も踏まえて、研究をまとめ、論文を執筆することに注力した。 研究期間全体としては、ドイツ法における、税務行政の効率性を、具体的素材に求めて、その意義を明らかにしすることに努めた。とりわけ、税務行政の電子化・自動化という流れの中で構築された制度の運用実態、理論的問題点について検討を行った。具体的には、納税申告の処理方法、事実に関する合意、事前照会、電磁的記録に係る税務調査という行政活動について、その内実・運用実態、実施に当たっての法的問題点としてドイツにおいて指摘されている事項を認識し、あるべき制度構築を行うに際しての基準の析出を試みた。こうした作業を通じて、わが国の税務行政における同様の事象を分析し、制度設計を行うための理論的基盤の構築を行うことに努めた。 例えば、特に、納税申告の処理についてみると、税務行政のリソースの有限性という与件のもと、特定の案件に合理的にリソースを集中的に充てることが目下要請されており、その申告の選別基準が重要となる。そして、納税申告が一定の場合には人手により処理されるので、課税処分は完全には自動化されない。加えて、そうした制度が正当化される理論的根拠を確認し、さらに、基準は非公表とされるが、それを行政規則として行政が具体化することの問題点と対応策、さらには、仮に、(将来的な選択肢としての)選別基準を逐次自律的にアップデートされるアルゴリズムとした場合の問題点等を議論した。
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