研究課題/領域番号 |
18K01254
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
酒井 貴子 大阪府立大学, 経済学研究科, 教授 (40359782)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | GAAR / 行為計算否認規定 / 租税回避行為 / 税制簡素化 |
研究実績の概要 |
本年度においては、概ね下記の3つの研究実績があった。 第一に、わが国においてはGAARはないが、限定的な一般否認規定が存在しており、これに関して争われた基礎的な裁判例から最近の裁判例及び関連文献を収集・精読の上、担当したテキスト(『租税法』日本評論社、2020年8月出版)や、評釈執筆部分(2021年公表予定)の執筆を進め、研究の第一歩として学ぶべき基礎的論点を浮き彫りにすることができた(研究対象としたのは、同族会社に対する行為計算否認規定と組織再編税制に係る行為計算否認規定)。 第二に、税制が複雑化する中、簡素化がGAARの利点の一つとし得るかの検討素材の一つとして、GAARを持つ英国における税制簡素化に向けた組織的取組を検討した(租税研究850号33頁・2020年)。税制簡素化のために立ち上げられた組織(Office of Simplification、OTS)の発案は、同国におけるGAAR起案時と同時期であり、その後発展したものだが、OTSは、税制複雑さの指標を取り入れ、効率的に税制簡素化を実施していることについて、考察が進められた。 第三に、消費課税についての学会発表(第49回租税法学会第2報告)を行い、その中で、複数税率導入後の諸問題を検討した。とりわけ、標準税率と軽減税率の両方を割り振らなければならない資産の場合では税負担軽減を加味した内容であるかどうか、すなわち、租税回避行為ではないかといった視点が持ち込まれると、経営判断を歪める可能性があることを指摘した(論文脱稿済みにて公表は2021年8月頃)。また、研究報告の準備の中で、英国の電子新聞の扱いに関する裁判例に触れることができ、日本における軽減税率の対象となる「新聞」の定義の法解釈の検討を行い、近畿税理士会に投稿できた。 その他、いくつか判例評釈を書き、今後の研究論点をさぐった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、コロナ過の関係で、当初予定した海外出張を通じての諸外国GAAR制度についての突っ込んだ探求には至らなかったが、オンラインの研究会に参加させてもらい、GAARを巡る論点でも見逃しがちな論点を拾っていくことができた。とりわけ、税制度の簡素化(英国OTSの紹介と検討)と、近年改正を踏まえた消費税課税問題(複数税率採用に伴う税率割振りの問題)などにおける論点について検討を行うことができ、比較的充実した研究活動が行えたと考える。 また、データベースや郵送による文献の収集を通じて得た資料精読により、基本的な論点から発展的な論点までを網羅的に考察を進め、本年度の実績に挙げた通り租税法テキスト執筆を行えたことは一つの成果と考える。またいくつかの判例評釈を執筆し、今後の研究の端緒を探ることができた。 過年度までにおいて、やや遅れ気味であった研究に進展が見られたという意味で、上記の自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、主に次の二点となる。 第一に、諸外国のGAARと義務的開示制度についての検討を行い、最新情報の収集に努め、わが国における義務的開示制度導入の是非の議論をまとめる。第二に、組織再編税制に関連して、最近の行為計算否認規定の適用事例を検討し、まとめあるいは個別の研究成果として公表する。 上記研究の推進に当たっては、最新事例などの情報収集のためのリサーチと同時に、さらにこれまでの多くの資料の整理を要するものと考える。また、前年度までにリサーチの対象として挙げた論点についてもフォローしながら、今後判例中心の検討の結果、更に追求すべき法的論点を探り、今後の発展的研究にむけたリサーチも推進していく。なお、第50回租税法学会の学会活動や他の研究団体の研究会に携わる予定でありこれを通じ、上記の研究を、他の研究者や実務家の方と議論を交えながら進められることと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大の影響により、国内外の出張を行えず、当初予定した国際、国内学会の参加や資料収集等の機会が得られず、その分について、予算を繰り越すことで、次の機会を得たいを考えた。また、同影響により、当初予定から延期すべき研究予定もあり、また、国際的な議論が停滞している部分も見受けられたことから、それらについては、短期に進め未消化分が出ることのないように、次年度において精査の上時間をかけて検討すべきと考え、次年度使用額を残すこととした。
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