研究課題/領域番号 |
18K01255
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
安部 和彦 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 准教授 (20611693)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 法人税 / 申告情報 / 開示 / 課税情報 / データベース |
研究実績の概要 |
申告納税制度の下で、適切な課税を実現するためには、納税者及び課税庁双方に対し、課税要件事実に関する正確かつ十分な情報(課税情報)が提供されることが不可欠である。当該課税情報は、主として納税者による申告、法定資料の提出(情報申告)及び課税庁による質問検査権の行使(税務調査)により収集される。現代社会におけるテクノロジーの飛躍的進展とマイナンバー(個人番号・法人番号)というインフラの整備、国際的な租税情報交換網の構築により、課税庁による当該課税情報の効率的な収集及び紐づけが可能となることが見込まれる 一方で、それが深刻な個人のプライバシー(privacy)の侵害を誘発することも想定されるところである。この点についてはかねてから指摘され、税の分野においてもマイナンバー制度導入時において様々な対応がなされたところである。 また、法人情報の開示という観点からは、上場企業については、財務諸表は開示されているものの、税務申告に関する情報は非常に限定的なもののみ開示されているにすぎない。しかし、税務情報の開示により、広く納税者の目に晒されチェックを受けることで、アグレッシブなタックスプランニングが抑制される効果があるという指摘もある。 そこで本研究では、情報・テクノロジーの進展に伴い、わが国でも法人課税の困難性という問題に直面する中で、法人のプライバシーに着目し、かつてわが国においても2006年まで存在した法人の申告情報の開示の意義とその問題点について、アメリカやオーストラリアにおける取組みをも参考にしながら検討するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、課税情報のうち、法人税の申告情報に関する調査を行った。具体的には、情報・テクノロジーの進展に伴い、わが国でも法人課税の困難性という問題に直面する中で、法人のプライバシーに着目し、特に法人の申告情報の開示の意義とその問題点について、主としてアメリカにおける取組みを調査し、その内容を検討した。 アメリカにおける取組みについては、文献調査でその歴史的経緯や現在の状況を把握した。また、アメリカでの現地調査により、さらに詳細な情報を収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査方針にのっとり、法人税の申告情報の開示に関し、加盟国共通のデータ保護規則を制定したEUでの取り組みを調査するため、欧州での現地調査を予定している。 また、法人税の申告情報の開示に関し、法令による強制開示のみならず法人の自発的な開示の制度も導入しているオーストラリアの制度についても調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費のうち、購入予定であったものの入荷が期末までになされなかったため。また、旅費について、調査を進める中で、法人の申告情報開示につき既に先進的な取組を行っているオーストラリアにつき、新たに現地調査を行うが必要であることが判明したため。 次年度は当初計画していた欧州に加え、オーストラリアの現地調査も行うが、それらの費用は今年度の残額と次年度の予算額の合計額から支出することとなる。
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