研究課題/領域番号 |
18K01255
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
安部 和彦 国際医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 准教授 (20611693)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 申告情報 / 法人 / 開示 / プライバシー / 所得 |
研究実績の概要 |
経済のグローバル化・情報化の進展とともに、法人の所得の把握が年々困難さを増しており、現在、法人税制が岐路に立たされている。近年の国際的な傾向として、法人課税については、法定税率は引き下げつつ、課税ベースは拡大していくという方向性がみられるが、一方で、多国籍企業による極めて技巧的で国際的なタックスプランニングにより、課税ベースの浸食は深刻化している。 もちろんこの点については、OECDのBEPSプロジェクトにより加盟国間の認識の共有化が図られ、課税情報の交換や報告等の枠組みが実行に移されるとともに、加盟国における必要な国内法制の整備が図られてはいる。しかし、現状、大多数の多国籍企業が上場企業であり財務諸表が公開されているにもかかわらず、その法人ないし法人グループがどの国でどの程度の法人税を支払っているのかといった基本的な情報ですら、その財務諸表から読み取ることができない 。これでは、今後のわが国の法人税制をどのように構築していくのかを検討するにあたり、その基礎となるデータすらない状態であるといわざるを得ない。 このような問題意識の下、わが国における法人の申告情報開示につき、その制度設計を行う上で必要な論点につき、米国や欧州、豪州における制度の内容をプライバシー保護の権利(right to privacy)という観点も含め把握するため、文献調査のみならず実地調査を行うことにより、わが国への示唆を得ることを目的に実施するのが本件調査研究である。 本年度は、昨年度の米国における法人の申告情報開示の実態調査を踏まえ、調査対象を欧州全域に広げ、オランダにおける実地調査により、比較的情報開示に積極的な北欧諸国と消極的な英・独・仏といった国の実情について検討を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はわが国における法人の申告情報の開示に係る在り方を検討するため、まずアメリカの状況について実地調査を行ったが、2年目は更に欧州の状況を確認するため、オランダに実地調査に赴いた。初年度の調査内容については税務会計研究学会で発表するとともに、学術誌にその成果につき論文を投稿し掲載された。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目において調査した内容は既に税務会計研究学会で発表していることから、この内容をベースに論文化して学術誌に投稿していく予定である。また、3年目においては、法人の申告情報の開示に関し、現在最も特色のある制度を持つ豪州の取組につき、文献調査を進め、わが国への示唆を得ることで、調査全体を締めくくりたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた書籍及び論文の発行が次年度にずれ込んだため。
|