経済のグローバル化・情報化の進展とともに、法人の所得の把握が年々困難さを増しており、現在、法人税制が岐路に立たされている。近年の国際的な傾向として、法人課税については、法定税率は引き下げつつ、課税ベースは拡大していくという方向性がみられるが、一方で、多国籍企業による極めて技巧的でグローバルなタックスプランニングにより、課税ベースの浸食及びそれに伴う税収欠陥は深刻化している。 もちろんこの点については、OECDのBEPSプロジェクトにより加盟国間の認識の共有化が図られ、課税情報の交換や報告等の枠組みが実行に移されるとともに、加盟国における必要な国内法制の整備という対応が図られている。しかし、現状、大多数の多国籍企業が上場企業であり財務諸表が公開されているにもかかわらず、その法人ないし法人グループがどの国でどの程度の法人税を支払っているのかといった基本的な情報ですら、その財務諸表から読み取ることができない。これでは、今後の我が国の法人税制をどのよう構築していくのかを検討するにあたり、その基礎となるデータすらないという心許ない状態であると言わざるを得ない。 このような問題意識の下、我が国における法人の申告情報開示につき、その制度設計を行う上で必要な論点につき、米国や欧州、豪州における制度の内容をプライバシー保護の権利(right to privacy)という観点も含め把握するため、文献調査のみならず実地調査を行うことにより、我が国への示唆を得ることを目的に実施するのが本件調査研究である。 最終年度である本年度は、米国及びオランダで行った実地調査の内容を踏まえ、諸外国における法人の申告情報の開示に係る動向を整理し、今後の我が国のあり方を検討してその方向性を示した。
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