研究課題/領域番号 |
18K01256
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
奥村 公輔 成城大学, 法学部, 准教授 (40551495)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | フランス国務院 / ベルギー国務院 / オランダ国務院 / 独立の公平な裁判所による裁判を受ける権利 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、フランス、ベルギー及びオランダの国務院に関する制度及び議論を調査・検討した。 フランス国務院に関しては、従来から研究を行ってきたが、今年度は、フランス国務院全体の制度を明らかにするために、フランスの行政裁判法典の翻訳を行った。この翻訳により、フランス国務院の制度全体を詳らかにすることができた。奥村公輔「フランス国務院関係法令集」成城法学86号(2020年)381-425頁。また、フランス国務院行政部の憲法解釈に関する報告を行い、研究会参加者から多くの知見を得ることができた。奥村公輔「フランスにおける政府の憲法解釈」(フランス行政法研究会、2019年6月、上智大学)。 ベルギー国務院についても、その全体像を把握するために、ベルギー国務院に関する諸法令を翻訳した。奥村公輔「ベルギー国務院関係法令集」成城法学87号(2020年)169-251頁。また、ベルギー国務院に関して、長官のJacques Jaumotte氏にインタビューを行うことができ、文献からは知りえない貴重な情報を得ることができた。Jaumotte氏へのインタビューは録音しており、そのインタビューの内容を我が国内で公表することを許可されたので、来年度に紀要等にて日本語に翻訳した上で公表する予定である。 オランダ国務院に関しては、欧州人権条約の保障する「独立の公平な裁判所による裁判を受ける権利」との視点からの検討を行った。奥村公輔「欧州人権裁判所に直面するオランダ―二重機能型国務院と「独立の公平な裁判所」-グローカル研究No7(2020年)1-19頁(近刊のため予定)。さらに、オランダ国務院へのインタビューも実施することができ、国務院評定官のH. G. Lubberdink氏へのインタビューから貴重な情報を得ることができた。Lubberdink氏へのインタビューも来年度に紀要等にて公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、法制諮問機関としての機能と最高行政裁判所としての機能を有するフランス、ベルギー、オランダ及びイタリアの国務院を比較法的に検討することを通じて、ヨーロッパの二重機能型国務院の特徴を分析することを目的としている。フランス国務院に関しては、従来からの研究による蓄積があり、その全体像を理解することができている。また、ベルギー及びオランダの国務院に関しては、インタビューを実施してその全体像を理解できつつある。 イタリア国務院に関しては、文献調査については行ってきたものの、当該機関に対するインタビューが実施できていない。 また、欧州人権条約6条は「独立の公正な裁判所による裁判を受ける権利」を保障しているが、この観点からの二重機能型国務院の検討も行ってきているが、欧州人権裁判所に対するインタビューは実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である令和2年度は、積み残した課題であるイタリア国務院及び欧州人権裁判所へのインタビューを実施する。ただし、新型コロナウィルスの状況を踏まえ、現地には赴かず、電子会議の形でインタビューを実施する可能性もある。インタビューの内容は、前年度に行ったベルギー及びオランダの国務院に対するインタビューの内容も含めて、それぞれ、紀要等にて資料の形で発表する。 また、フランス、ベルギー、オランダ及びイタリアの国務院の制度を詳らかにし、これらの国務院に対する欧州人権裁判所の態度をも明らかにした後には、これら4つの国の二重機能型国務院の横断的検討を行う予定である。法制諮問機関としての機能と最高行政裁判所としての機能を有する4つの国の国務院が、人権保障と権力分立の観点から、それぞれ、いかなる特徴を有しているか、また、いかなる問題を有しているかを検討する。これらの検討課題は、紀要等にて論文の形で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目の令和元年度においては、ベルギー国務院(ブリュッセル)とオランダ国務院(デン・ハーグ)へのインタビューを行ったが、本来であれば、イタリア国務院(ローマ)と欧州人権裁判所(ストラスブール)に対するインタビューも実施予定であった。しかし、先方の都合によりイタリア国務院と欧州人権裁判所に対するインタビューは実現できなかった。最終年度である令和2年度において、イタリア国務院と欧州人権裁判所に対するインタビューを実現するために、その旅費として令和元年度における予算10万円程度を令和2年度に繰り越すこととした。
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