研究課題/領域番号 |
18K01260
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
松原 有里 明治大学, 商学部, 専任教授 (30436505)
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研究分担者 |
姚 俊 明治大学, 商学部, 専任准教授 (00610932)
潮海 久雄 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (80304567)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 移転価格 / 無形資産の評価 / 国際会計 / 国際租税法 / 特許権 / AIと知的財産 / 租税条約仲裁条項 / OECD |
研究実績の概要 |
今年度は、共同研究初年度かつ研究代表者が本務校より認められた在外研究の継続中ということもあり、個別に各々の専門分野での調査・研究発表活動に従事した。具体的には、研究代表者が、現在世界的にみても有数の大規模な共同研究・調査組織を有しているウィーン経済大学(以下WU)に客員研究員として半年間滞在することが可能となり、その間、同大学で開催された租税条約や移転価格税制についての各種のワークショップや国際会議に参加(招待)、そのうち一度は英語でわが国の現状について報告するなどして、他国の報告との比較で知見を広めることができた他、わが国の平成31年度税制改正に、BEPSに基づく移転価格税制の改正も盛り込まれていたことから、日本国内外の関係省庁および実務家の関係者とも適宜意見交換を行うことができた。それにより、従来、日本がコミットしている先進国側すなわちOECD租税委員会の発言力・情報発信力に対して、主に途上国を主とする国連側の発言力も強まってきていることをあたらめて確認できた。 あわせて、平成30年11月に会計学の研究分担者者がウィーン出張し、WUで1週間程、研究活動したことから、中国での無形資産に関する会計制度の概要に関して説明を得、併せて研究代表者とWUの博士課程で、移転価格税制について執筆中の国際課税・国際会計専攻の中国人院生と3名で意見交換を行うことができた。中国に関しては、無体財産会計自体が比較的最近導入されたほか、官と民でわが国にまして国際税務のスタンスに違いがあることも明確になった。 知的財産法の研究分担者は、ミュンヘンのマックスプランク研究所および英国の諸大学を拠点として、知的財産法の分野から欧州(特にEUレベル)の最新事例の研究を進めたほか、対中関係では(一財)知的財産研究財団により行われた平成30年度知的財産に関する日中共同研究の報告を行うなど、研究の基礎固めを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初は、地理的な制約もあって、初年度は研究者単独での資料収集のみを想定していたが、租税法の分野では、研究代表者がウィーンでの国際会議に招待講演という形で参加することができ、その成果を英文の業績で今後公刊することが可能になった(令和元年5月現在、校正作業中である)。 また、租税法と会計学の交錯する分野に関しては、研究代表者と研究分担者が一同に会して、日本国外で共同での打ち合わせも可能となり、将来的な研究ネットワークの拡大の可能性も含めて、それぞれの問題関心に対する相互理解が深まった。 さらに、知的財産法の研究分担者ともその間、適宜メールをやりとりすることで、互いの研究成果および研究の進捗状況について報告しあっているため、翌年後以降の共同研究の下準備が十分に可能になったと考えられる。とりわけ、知的財産の価値評価に関して、軽量分析の専門家ともコンタクトがとれるようになり、今後はその知見をも研究成果に組み込んでいく予定である。 最後に、欧州方面だけでなく、アジア・オセアニア地区、とりわけ対中関係で、すべての分野において、研究開始1年目から、具体的な共同研究の人的ネットワークおよび国際会議への参加もしくは共同報告書(和文・欧文)の作成を通じて分野横断的に人的関係を築くことができたのが、非常な収穫であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、知識のインプットだけでなく、アウトプットにも留意し、各人の国際会議やシンポジウムへの積極参加(単なる会議への出席にとどまらず、パネリストやコメンテーターとしての出席)や、研究成果の公刊に務める予定である。 合わせて、欧米豪からの若手・中堅のゲスト研究者を日本へ招聘することも考えている。具体的には、研究代表者が令和元年5月にウィーン、また6月にメルボルンで開催される国際租税に関する国際会議にそれぞれパネリストとして参加し、英語でプレゼンを行う他、その内容を英語ないし日本語で公刊することを予定している。 また、令和元年11月には、スウェーデンの若手・中堅研究者を日本に招聘し、共同研究ないし学生・院生向けに英語での共同講義を行うことを予定している。さらに、研究分担者の二名とは、今年度以降は、月一度を目途に研究会ないしワークショップを開催し、それぞれの知見を披露したうえで、今後の業績につなげたいと考えている。なお、実証会計学の分野と近い計量経済学の専門家にも、適宜補助者として、別途、本共同研究上の助言を請う予定である。 そのため、知的財産法が専門である研究分担者は、次年度以降もミュンヘンのマックス・プランク研究所を海外(特に欧州)での活動拠点とし、会計学が専門である研究分担者は英国のLSEおよびウィーンのWUを拠点として活動と行うことを予定している。また、欧州会計学会での発表も視野に入れて、ドイツやフランス会計の専門家からも助言を得る予定である。 中国との関係では、経済・経営学(会計学・計量経済学)と法(税法・知的財産法・会社法等)に通暁した同国出身の専門家に、適宜日本国内および国外で、コンタクトを取り、比較研究を進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究代表者のスウェーデンへの調査出張が、相手側の都合により延期になり、次年度に繰り越したため。
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備考 |
潮海久雄「AIと知的財産法に―特許法を中心に」(第2章 AIに係る知財法制に関する研究―特許を中心に―、第3節 日本におけるAIに係る知財法制)
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