研究課題/領域番号 |
18K01262
|
研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
北見 宏介 名城大学, 法学部, 准教授 (10455595)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 公法 / 行政法 |
研究実績の概要 |
研究初年度である2018年度には、当初の計画に沿って、歴史的な検証に係る文献調査の作業に取り組んだ。この作業において重点的な検証期間の1つとして予定していた時期に1つにおいて合衆国で創設されていた、政府内法律家の組織構造について、これを大きく変容させる大統領命令が本年度中に示された、また、これを受けて同大統領命令により変容された事項に係る合衆国政府の対応方針として、司法省訟務長官ガイドラインも策定された。このことから、大統領命令の背景に存在する諸事項、すなわち、憲法上の大統領の権限条項、これに関わる合衆国最高裁の2010年判例、この判例を端緒とする学説上・下級裁判例上の議論状況、今後予期される争点等を整理する作業に着手した。研究期間内に新たに生じた事象であるため、評価についてはなお慎重な態度が求められるところであるが、すでにかの国においては、政府内法律家の独立・法/行政過程への大統領による政治的監督を導くものであり、Unitary Executiveの観念に親和的との理解を示す論者が存在する一方、今後予期される憲法上の論点に関しては、強い懸念を示す有力な論者が複数存在しているという状況にある。以上の作業によって得られた内容は、招待を受けたイギリス行政法研究会において報告を行った。また、刊行が決定している論文の校正段階において、本格的な検討は今後の課題としつつ、現時点での最小限の紹介を、付記として加筆するという形で行っている。 他方、国内については、首長のイニシアティブという要素に着目しつつ、条例を取り上げた上で、その制定過程の検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」欄に示したとおり、研究初年度において、本研究に密接に関連する新たな事象が生じるに至った。このフォローを行う作業が新たに加わった。こうした新たな事象の発生は研究計画策定時から予測していたところであり、研究期間後半において、追加的に生じる作業を見込んだ予備期間として設定していたが、この期間に行う補完作業を、今年度内にも事象並行的に行うこととした。このため、2018年度中に完了することを予定していた事項のうちいくつかが未完了となっている。本年度の追加的作業が、研究計画において第2年次に着手すべき事項の具体的素材選択と予備的作業と重なるものとなっており、むしろ研究初年度の内容と第2年次の作業視角を連接させることとなっていることから、研究期間全体での進捗状況としては判断が難しいところであるが、初年度中の作業に未完了のものが存在することから、この分だけ「やや遅れている」と評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の第2年度においては、初年度に予定していた作業を完了させるとともに、当初から第2年度に予定していた作業と、現下の事象の展開を並行的に検証する作業が多くの部分を重ねることから、引き続き、この検証作業を継続しつつ、大統領府内の法律家が具体的にどのような作用に携わってきたかの分析に取り組む。その際には、現下の動向が、従来との歴史的な比較においてどのような評価が与えられるべきなのか、という第3年度での総合的な評価の作業を意識しつつ、関係機関の組織や対象領域の特殊性の有無や、背景の制定法上の権限分配状況に意識を向ける必要があることを、第1年度の作業を通じて認識するにいたっている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度において発生した新たな事象に関する検討の進展と、それにともなう新たな文献の刊行が予測され、部分的には重要な文献の刊行予定が本年度中にすでに明らかになったことから、基金による次年度使用の利点を生かすべく、本年度中の文献の購入をいったん差し控え、第2年度における購入に振り向けることとした。次年度においては、この事象に関連するものに重点をシフトして、文献の購入を行うこととなる。
|