最終年度となる2021年度においては、まず、大統領と議会との関係の変容という側面にも注目を向けつつ、比較的近時の、議会から自由な執行府の組織内人材配置の状況と大統領法律顧問を照らし合わせる作業に取り組んだ。この作業を通じては、大統領法律顧問の特に議会との関係での非公式性の要素が、(1990年代に一定の議論がなされたにもかかわらず)大統領法律顧問の活動・組織上の位置づけに係る評価を行う際の前提となることが確認された。また前年度から引き続く、ごく近時の大統領法律顧問の活動のありかた、大統領個人と大統領法律顧問の関係についてのフォロー作業においては、大統領が、従来とは異なる大統領法律顧問(さらにはホワイトハウススタッフ)との関係性を築いているという評価がなされつつあることを知るに至った。これについては研究期間と同時平行的な事象に目を向ける作業であり、確固とした学術的なものとしては評価が固まっているとまでは言い難いようにもうかがわれることから、引き続く検証が必要となる。 上記の作業から得られた事項も加えた上で、2021年度には本研究の総括として、合衆国法律顧問の歴史的な展開、政府内における複在的・多元的な法律家との併存関係の下での位置づけ、大統領法律顧問さらには政府内の他の法律家による諸活動に関する比較検討結果をとりまとめる作業を行い、さらに、かの国におけるこれらの議論のなされ方に注目を向けることで、これらに対する規範的な評価のあり方という新たに獲得された問題を抽出する形で、本研究の成果を公表する作業を行った。
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