研究課題/領域番号 |
18K01268
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
辻 美枝 関西大学, 商学部, 教授 (00440917)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国際課税 / 保険会社 / 恒久的施設 / 法人税 |
研究実績の概要 |
2021年度は、外国保険会社の所得課税に係る問題として、保険会社独特の保険販売形態である保険代理人に着目した。恒久的施設は外国法人への所得課税の根拠として重要な意味を持つ。保険代理人の恒久的施設該当性は、1963年OECDモデル租税条約の策定時から問題視され、2015年に公表されたBEPS行動7最終報告書「恒久的施設認定の人為的回避の防止」にもつながる問題である。そこで、2021年度は、主にOECDモデル租税条約策定当時から2017年条約改訂に至るまでのOECDの議論を追い、外国保険会社が恒久的施設を有さずに大規模な事業を行いうる要因を探るとともに、条約改訂内容の日本への影響を分析した(辻美枝「外国保険会社の保険代理人の恒久的施設該当性」(渋谷雅弘ほか編著『水野忠恒先生古稀記念論文集 公法・会計の制度と理論』(中央経済社・2022年)196-220頁))。条約改訂により恒久的施設の範囲は拡大され、保険代理人の恒久的施設該当性に関しては一定の解決をみたとされている。日本では、保険業法上の規制によって、外国保険会社は国内に支店等の拠点を有する場合に限り保険事業を行うことができ、その保険代理人が恒久的施設に該当性する可能性は低いため、結果として外国保険会社の所得は、支店等に帰属する所得として捕捉されることになり、条約改訂の影響は限定的である。 次に、国境を跨ぐ機能・リスクの移転時およびその後の保険会社の適正な所得課税の問題として、移転価格税制に着目した。東京地裁令和2年11月26日判決(東京高裁令和4年3月10日判決(日本ガイシ事件))を端緒に、事業再編に関わる移転価格税制の適用上の課題に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度も前年度から引き続きコロナ禍の影響により海外渡航が制限され、研究に制約があったことから、予定していた欧州出張によるヒアリング・リサーチなどができず、本研究課題の遂行に制約があった。そのような中でも、国内外を問わず文献・資料の収集に努め、本研究課題の主要項目である、保険会社の恒久的施設(特に保険代理人)を巡る課税問題に関する研究を遂行し、研究会での報告を経て研究成果を公表できた。 また、国境を跨ぐ機能・リスクの移転に関わる移転価格税制の問題が、研究の緒についたので、関連する裁判の動向も踏まえ、引き続き研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、実地調査に関してはコロナ禍による制約があるものの、国内外の図書館・研究機関のデータベースを有効活用して資料収集をするとともに、オンライン開催の国際学会に積極的に参加して各国研究者と情報交換をしつつ、本研究課題についての総括をする。 研究の適当な時期に関大租税法研究会・租税論研究会等で研究報告をし、そこでの議論を本研究課題に反映させ、最終成果論文を作成し公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍の影響により、予定していた国際学会への参加および調査のための欧州出張ができなかったため、次年度使用額が生じた。 2022年度に引き続き研究遂行する際の出張旅費、資料収集費として使用する予定である。
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