(1) 本研究では以下のことを検討することとしていた。第1に、環境行政領域秩序における民主義的参加に係る既存の法理を論理構造を解明する。第2に、環境行政領域秩序におけるinvisibleな行政の発見とその役割を解明する。第3に、環境行政領域秩序における民主主義参加の比較法研究に取り組む。そして、第4に、環境行政決定の受容可能性を高まる参加手続の法理の提示である。 (2)以上のうち、第2及び第3については、2019年度に本格調査、2020年度に補充調査を予定していた。具体的には、ウロンゴン大学とオーストラリア国立大学の研究者、ウロンゴンとキャンベラの自治組織に現地に行って聞き取り調査を行う予定にしていた。ところが、2019年度には、オーストラリア東部で大規模な山火事が発生し、その後、新型コロナ感染症を起因として、オーストラリアが入国制限を開始し、現在に至っているため、この点については、文献調査が主となり、研究の内容を深めることができなかった。第1及び第4については文献等について検討を加えて研究を進めることができた。 (3)以上の調査研究を踏まえた本研究の成果は「環境行政の手法と参加手続」晴山一穂ほか編『官僚制改革の行政法理論』(日本評論社、2020年)〔335-378頁〕として公表した。 (4)本研究の研究過程で、環境行政決定過程のどの段階で、いかなる適時の行政判断が求められ、その行政判断にあたりいかなる主体の参加が要請されるかが、受容可能性を高めるための課題として浮かび上がってきた。その端緒となる研究成果として「環境配慮の適時性に関する省察」本多滝夫ほか編「転形期における行政と法の支配の省察」(法律文化社、2021年刊行予定)〔79-96頁〕及び「辺野古新基地建設に係る公有水面埋立変更承認と環境配慮の適時性」法学セミナー2021年8月号刊行予定を公表した。
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