研究課題/領域番号 |
18K01270
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
實原 隆志 福岡大学, 法学部, 教授 (30389514)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 情報自己決定権 / ドイツ / 捜査活動 / 強制処分 / 法律の留保 |
研究実績の概要 |
本研究は、インターネット上で公権力によって行われるどのような情報収集活動が個人に重大な不利益を生じさせ、立法という形での「有権者の代表機関による同意」を求めることで統制されるべきかを、主にプライバシー保護の観点から明らかにすることを目的としている。 こうした目的から、本研究の目標は「インターネット上での、公権力によるどのような空間における、どのような情報収集が個人のプライバシー権等の憲法上の権利を侵害し、『具体的な法律上の根拠・立法』という形で『有権者の代表者による同意』を得ている必要があるか」を明らかにすることである。本研究終了後には、「インターネット上」や「警察」といった限定を外し、公権力による情報収集の問題一般を論じる議論へと発展させ、憲法上の適正手続主義や法律の留保に関する議論へと展開させていく予定である。 既に2020年度までの、文献調査を通じた研究により、インターネット上で捜査員が自らの素性を明かさずに行う情報収集活動の問題は、ドイツにおいては「特定性の要請」という憲法上の問題として構成されており、日本国憲法においてそれは、憲法31条の適正手続主義の一内容として理解できるのではないかと見解をもつに至った。 本研究の開始当初に研究の最終年度としていた2020年度にはドイツ国内での文献調査とインタビュー調査を行う予定であったが、コロナ禍の影響で行うことができず、研究を一年延長した。2021年度においても現地での調査研究に向けて準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究において、インターネット上で行われる捜査活動のなかで、法的な問題が未解決なものがオンライン上での覆面捜査であり、その対象は、誰でも閲覧できる情報である場合と、閲覧するためには何らかの登録を要する場合、また、何らかの登録をしたうえで、本人に「友だち」として「承認」を得る必要がある情報である場合があることが明らかになった。そして、そのなかでは「友だち」として承認を得ないと閲覧できない情報を捜査員が閲覧する場合が、最も憲法上、慎重さが求められるのではないかとの見解に至った。 他方で、こうした動向に関するドイツ国内の評価や最新の議論状況は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で現地調査を行えなかったために、十分には確認できていない。当初予定していた研究活動の一部を行えなかったため、その点で当初の予定から遅れが生じることになった。そこで研究期間を延長したが、国外で研究活動を行えない状況に変わりがなく、その点の遅れを解消できない状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において残る課題は、これまでの研究を総括的に整理するための研究である。また、2020年度に続き2021年度も行えなかった現地調査や、十分には行えなかった国内出張を通じた研究を、2022年度においては行いたい。 そのほかの点はこれまでの年度におけるのと同様である。国内外の文献調査を通じて、最新の議論状況も踏まえつつ、本研究の総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に新型コロナウイルスの感染が、日本国内と、現地調査を予定していたドイツ国内おいて拡大した。また2021年度にも状況が大きく好転することはなく、国内外での出張を通じた調査が行えず、それによって未使用金が発生した。 2022年度においては、2021年度には行えなかった出張調査と、新たに公表される文献の調査のために使用する予定である。
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