研究課題/領域番号 |
18K01272
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 一頼 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00405143)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 私的規範形成 / グローバル化 / 国際法学 / 正統性 |
研究実績の概要 |
本研究は、私的な専門組織等が作成した非拘束的な性質の基準や規格につき、その生成や作用の実態を幅広く調査するとともに、それらを包括的に取り込みうる理論枠組みを構築し、その固有の規範構造や社会的課題について考察することを目的としている。 こうした構想に基づき、昨年度までの研究においては、国境を越えた経済活動に影響を及ぼす私的規範を幅広く収集し、その規範的意義や社会的機能を分析してきた。本年度はその延長として、様々な経済分野に横断的に関係しうる「ビジネスと人権」に関する私的規範に焦点を当て、その淵源や発展プロセス、実定法規(国際法・国家法)との相互関係、法文化圏ごとのアプローチの違いなどに注目して検討を行った。 また、理論面での取り組みとして、私的規範を作成する各種フォーラムにつき、その運営ルールや意思決定手続、透明性や説明責任といった点についても引き続き考察を進めた。特に、私的規範の正統性の問題については、国内公法学で議論されている公私協働理論に着目し、私的規範形成と公的コントロールとの組み合わせにより実効性と正統性をともに確保しうる可能性について探究した。 以上のように本研究では、グローバルな私的規範形成が進展している諸種の分野について、実証・理論の両面から分析を継続している。これまでに蓄積したデータ・知見は広範な領域にわたっており、この問題に関する体系的な理論枠組みを構築するための基盤が整いつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新型コロナウィルス感染症の影響により、国内外における現地調査やセミナー出席の可能性が制約され、データの収集や検証、および他の研究者との意見交換の機会がやや乏しくなった。 しかし、本研究の中核をなす諸分野におけるデータはすでに昨年度までに一定程度収集することができており、研究計画全体の進捗に重大な遅れが生じたわけではない。また、意見交換やセミナー出席に関しても、オンラインミーティングの活用により対処可能な場合が増えており、この点でも研究計画に顕著な遅れは見られていない。 もっとも、こうした感染症の制約による影響が全くなかったわけではなく、当初は研究の最終年度となるはずであった本年度の内に、予定した調査・検討を完了させるには至らなかった。しかし、こうした不測の積み残しは、研究期間の延長により次年度において取り組むことで十分に対処可能な範囲のものであり、総じて本研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、調査・収集や意見交換の機会に制約が生じたことで、研究計画に若干の未完部分が生じたため、研究期間を延長して研究の完遂を期すこととした。最終年度となる次年度は、積み残しとなった調査等を、オンラインミーティング等も活用しながら実施するとともに、その成果も踏まえて研究全体の仕上げを行いたい。グローバルな私的規範形成に関する各種実例の実証研究の整理と、それを基にした総論的考察を完成させ、体系的な理論枠組みを構築したうえで、本研究の成果の公表に向けて必要な準備を進めることとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響により、調査収集やセミナーへの参加を目的とする出張が困難となったことなどから、次年度使用額が生じた。次年度においては、感染症の状況を注視しつつ、出張等を可能な範囲で実施するとともに、旅費に限らず文献資料等の物品費を中心に支出をすることも視野に入れながら計画的に執行していくこととしたい。
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