研究実績の概要 |
本年度の研究実績として、第一に、国際投資法の近年の変動を踏まえた概説を執筆したことが挙げられる(中川他『国際経済法【第3版】』(有斐閣、2019年)第13章「国際投資法」)。最近の国際投資協定が、投資家保護一辺倒ではなく投資受入国の規制権限にも配慮した実体規定と紛争解決手続を設けるようになっていることを指摘した。研究実績の第二として、インフラサービス輸出事業の多層的な法的枠組の各構成要素について、その形態と内容にいかなる要素を盛り込むべきか、そして、構成要素間の相互補完性と整合性をいかに保つべきかについて、考察を深めた。具体的には、火力発電、空港の建設と運営、高速道路の建設と運営、石油化学プラントを取り上げて、事業により多層的な法的枠組にどのような相違点と共通点が見出せるかを検討した。さらに、多層的な法的枠組の構成要素についても各事業ごとに具体例を取り上げて、その形態と内容を検討した。研究実績の第三として、インフラサービス輸出事業の多層的な法的枠組のうち、自由貿易協定(FTA)投資章について、いわゆる広域FTAを中心に近年の動向を検討した。その成果を以下の日本語および英文の論文として公表した。 Junji Nakagawa, Reinvigorating the WTO as a Negotiating Forum, in Nakagawa et al.,Strengthening the Rules-Based Trading System, Policy Centre for the New South, August 2019. 中川淳司「TPP11の日本企業への影響」『メディア展望』690号(2019年6月) 中川淳司「自由貿易体制の動向と日本の役割」『貿易と関税』2019年12月号
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