研究課題/領域番号 |
18K01274
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中西 優美子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (80327981)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | EUの権限 / 市民社会 / 個人の権利 / 環境 |
研究実績の概要 |
EU権限の研究を継続するとともに、EUにおける法の主体である個人を権限の観点から分析することを目的としている。研究対象は、主に、①EUの権限の発展、②EUにおける個人の権利の内容、③EUの権限と個人の権利の関係となる。これらの目的の実現を以下のように行った。
①については、EUの権限にかかわるEU司法裁判所と国内憲法裁判所の対話を検討した。これに関しては、特に、ドイツ連邦憲法裁判所のEUにかかわる判例を分析した。国際人権法学会で報告し、後日、雑誌『国際人権』において論文「ドイツ連邦憲法裁判所における『憲法アイデンティティ』審査」として公表した。
②及び③については、2019年2月1日に日本とEU間の経済連携協定(EPA)及び戦略的パートナーシップ協定(SPA)が発効したことから、この2つの協定に対するEUの権限、これらの協定、特にEPAに関する個人の地位及び個人の権限、また、環境の側面に焦点をあててを検討した。EPAと個人については、履行確保・紛争解決制度においてNGOなどの市民社会の参加がどのように規定されているかについて、後述する業績にあるように、公表された論文、"New trade rule-making regarding sustainable development in EU-FTAs with Asian Countries", 履行確保・紛争解決制度のみならず、交渉文書へのアクセス、意思決定制度への参加、規制する権利導入における市民の役割などを検討した、公表された論文、"Environmental Democracy in the Economic Partnership Agreement between the EU and Japan"、「EUの民主主義における市民社会の参加ーEUのFTAsを素材にして」等において明らかにしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
日本とEU間のEPA及びSPAに関して、EUの権限、市民社会、環境等、さまざまな観点から分析し、それを国際シンポジウムで報告した。クロアチアでは、SPAの意義(英語)、ベトナムでは、環境とエネルギー(フランス語)、タイではSPAの意義(フランス語)、イギリスでは環境保護(英語)をテーマにして、発表した。国際シンポジウムで報告したものを基礎として、本が出版され、それに寄稿することができた。また、複数の論文を英語及び日本語で公表することができた。 また、雑誌『自治研究』において、隔月でEU司法裁判所及び構成国の憲法裁判所または最高裁判所の判例研究を「EU法における先決裁定手続きの研究」として連載し、継続している。 さらに、一橋EU法研究会を主催し、原則毎月研究会を開催し、7月には、英国のEU離脱について、ミニ・シンポジウムを開催した。その成果は、雑誌『EU法研究』8号に特集として掲載される予定である。 現在もこれら2つの協定に関する国際協力プロジェクトがマックスプランク研究所(ルクセンブルク)の研究員との間で進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、権限、権限と個人の問題、さらに前者に深く関与する環境法について研究を深めていきたい。2020年度としては、『EU環境法』(法律文化社)の出版を計画し、準備を進めている。 雑誌『自治研究』において、EU司法裁判所及び構成国の憲法判所または最高裁判所の判例研究を「EU法における先決裁定手続きの研究」として引き続き連載していく予定である。また、判例研究に限定せず、EU司法裁判所、構成国の裁判所(特にドイツとフランス)について引き続き、研究を進めていきたい。 EUの権限と個人について、資料取集及び分析を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた英文校正が2020年度に伸びたため,残金が発生した。 2020年度は、引き続き、英語等で論文を報告したり、執筆したりする予定である。その校正をお願いする予定である。 また、『EU環境法』(法律文化社)の出版を予定している。 さらに、コロナが一段すれば、国際シンポジウムでの発表も行いたいと考えている。
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