研究実績の概要 |
本研究の目的は、「投資家対国の紛争(投資紛争)に焦点を当て、投資紛争解決手続においてCSR概念が果たし得る役割の検討を通じ、投資紛争において企業の権利と義務の均衡を図るための理論的基盤を構築する」ことであった。この問題を検討するため、1,000の投資協定の量的テキスト分析(リサーチ・アシスタントを雇用)、文献調査、判例調査と分析を行い、多国籍企業に対する国際法上の保護と義務・責任付与の欠如との間のギャップを明らかにした上で、その現状の中で、企業の環境・人権責任を投資紛争解決に反映するための方策を検討した。具体的には、投資紛争解決手続における国による反対請求をめぐるさまざまな問題(管轄、受理可能性、請求の法的根拠等)、抗弁及び請求減額の根拠としての投資家の責任、をそれぞれ検討した。その上で、現状の国際投資法の枠組みの限界を明らかにし、その改善に向けての提言を行った(投資家対国の調停に対する第三者参加など)。また、CSRの法的効果及び、これを理由とする反対請求の可能性についても検討した。 研究成果は、国際学術雑誌(Columbia FDI Perspectives)への掲載、国際学会等での発表に加え、研究の集大成となる成果として、2022年12月、ケンブリッジ大学出版会から、単著Tomoko Ishikawa, Corporate Environmental Responsibility in Investor-State Dispute Settlement: The Unexhausted Potential of Current Mechanisms (CUP, 2022)を出版した。
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