研究課題/領域番号 |
18K01276
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中西 康 京都大学, 法学研究科, 教授 (50263059)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国際裁判管轄 / 当事者自治 / 合意管轄 / 弱者保護 / 強行法規 |
研究実績の概要 |
2019年度においては、国際裁判管轄の合意をめぐって本研究課題で検討を行う3つの問題について、それぞれ検討を進めてきたが、論文公表には至らなかった。それぞれの問題についての、2019年度末時点での検討状況は以下の通りである。 1.外国裁判所への専属的な国際裁判管轄の合意をめぐり、公序法違反要件を問題としてその効力を否定しようとしている一連の裁判例(大阪高判平成26・2・20、東京高判平成26・11・17など)の検討。このような管轄合意は将来、改正法の弱者保護のための特則が適用されるようになれば(管轄合意について3条の7は、平成23年改正法の施行後に締結された合意にのみ適用される。平成23年法律第36号附則2条2項),そのような特則で処理されるのが筋であり,公序法違反要件をふくらませて法的安定性を損なう解釈は避けるべきである。 2.法廷地国際的強行法規と外国への専属的な国際裁判管轄の合意。東京地判平成28年10月6日(金商1515号42頁)及び控訴審判決の東京高判平成29年10月25日(平28(ネ)5514 号)を契機に議論が進んでいる。両判決の判例評釈を参照しながら検討を進めているが、両判決とも、国際的強行法規の適用の回避が問題となっているにもかかわらず、国際私法上の公序判断と同じように、管轄合意された外国で裁判した場合の適用結果を比較考慮している点について、疑念があり、検討をさらに進めるべきであると思われる。 3.専属的な国際裁判管轄の合意がある場合の併合管轄の可否。この問題は、専属的な国際裁判管轄合意の効力、そこでの当事者の意思の持つ意味に帰着するので、本研究課題の検討を進めるにおいては、最後に回すのが適当である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究科内の運営業務に思いのほか時間をとられて、本研究課題の進捗状況はやや遅れていた。さらに、この多少の遅れを挽回しようと思ったところに、新型コロナウイルスの問題が生じて、文献や判例の入手に支障が生じ、状況は悪化している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度までに完成するに至らなかった部分にまず取り組むのほかは、当初予定と大きくは変わらない。それゆえ、以下の2つの問題の検討を行う。第1に、強行法規と管轄合意の関係の検討。管轄合意の対象となっている紛争に適用される法規が、通常の法規ではなく、国際的にも強行的に適用を欲する場合(絶対的〔国際的〕強行法規)、その強行的適用を確保するために外国への専属的な国際裁判管轄の合意の効力をいかに考えるべきか。最近のわが国の裁判例(東京地判平成28・10・6)を出発点として、諸外国での議論を参考にこの問題の検討を行う。 第2に、専属的な国際裁判管轄の合意に認められる効力の検討。外国裁判所への専属的な管轄合意を当事者間でしているにもかかわらず、この紛争に関する訴えと、関連があるが別の訴えとを併合して、わが国で提訴された場合に、当事者間ではA国の管轄を専属的に合意したはずの請求についても、民訴法3条の6の併合管轄により、わが国に国際裁判管轄が認められるか。裁判例を手がかりにこの問題の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定以上に、所属部局での運営業務に時間を取られ、本研究課題の進行が遅れた。また、年度末に予定していた、新刊図書の購入費と研究会への出張旅費が、新型コロナウイルスの感染拡大により、支出できなくなった。 翌年度に、遅れた分の研究課題の進行を進めることで、使用する。
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