本研究開始とほぼ並行するタイミングで、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)および投資紛争解決国際センター(ICSID)において、仲裁人行動規範にかかる規則作成作業が始まった。そこで、その規則作成作業に直接参加するという実務・実践的活動と、理論的研究との相乗効果を図る形で研究を進めた。実務・実践的活動の面では、累次にわたるUNCITRAL・ICSIDの会合(コロナ禍によりオンライン)に参加し、修正案を出すなどの形で貢献することを試みた。 理論面においては、(1)仲裁人の独立性・不偏性をそれぞれどのように概念規定するか、(2)現状において仲裁人の独立不偏性につきどのような懸念が示されているか、につき明らかにすると共に、その懸念を晴らすための対応を考え、(3)仲裁人の独立不偏性をそれだけで取り上げるのではなく、投資紛争処理制度の制度設計との関連で検討する必要があるということを示し、濵本も参加するAcademic Forum on ISDSにおける共同研究(Journal of World Investment and Trade掲載論文)において、それぞれの制度設計ごとの長短と、それに応じた対応策につき一連の具体的な提案をなすことができた。 さらに、仲裁人の独立不偏性問題は紛争処理制度の正統性に関する理解に大きく左右されるとの理解から、後者についての研究を進め、その基本的な議論枠組みと研究の世界的な到達点につき、Max Planck Encyclopedia of International Procedural Lawにて成果が間もなく公表される(校正済み)。加えて、正統性問題の一部である仲裁人の多様性にかかる問題について、問題の現状と検討の見取り図を示す論考を法学論叢に掲載した。
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