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2019 年度 実施状況報告書

「第三国による対抗措置」の理論的および現実的妥当性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K01282
研究機関立教大学

研究代表者

岩月 直樹  立教大学, 法学部, 教授 (50345112)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード経済制裁 / 重大な人権侵害 / 国際社会の公共利益 / 対世的義務 / 勢力均衡
研究実績の概要

本研究の実施2年目となる2019年度においては、①前年度に引き続き「第三国による対抗措置」を独自の法概念として提示する学説の批判的検討を継続するとともに、②関連する国家実行、とりわけEU諸国による大規模人権侵害事案への対応として行われた経済制裁に関わる実行について調査することを予定していた。
①については「第三国による対抗措置」を独自の法概念として捉えることの理論的基盤としてどのような考え方が成り立ちうるかという観点から、関連する古典的な平時復仇に関する文献から国連国際法委員会における国家責任条文の審議過程に到るまでの文献資料を検討した。古典的文献においては、公序あるいは公共利益を直接に「第三国による対抗措置」の基礎とすることに対する慎重さが見られ、それは19世紀から20世紀の欧州諸国間の政治的緊張関係を反映しているものと考えられる。それに対し、今日の「第三国による対抗措置」をめぐる学説では国際法秩序を維持するための積極的な手段として認めることを、公序あるいは国際社会の公共利益から直接に、あるいは躊躇なく正当化する傾向が見られる。こうした見解は欧州諸国における民主的国家統治体制に対する自信あるいは信頼を反映しているものと考えられる。しかし、それがどこまで根拠のあるものであるかについては批判的でなければならず、そうでなければ「第三国による対抗措置」理論がそれら欧州諸国の価値観あるいは現状の国際社会における政治的優位性を覆い隠すためのイデオロギーとなりかねない。このような問題性をふまえてなお、「第三国による対抗措置」を法概念として認めうるか、さらに検討を進めたい。
②については、当初予定していた出張調査がスケジュール調整の困難さから実施できなかったため、次年度に行うこととした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

EU諸国による経済政策に関する政策決定過程を明らかにするために、イタリア、フランス、ベルギーにおける調査及び資料収集のための出張を予定していたが、当初の予定通りにスケジュールを調整することができなかったため、本年度における実施を断念した。そのために、資料収集という点で若干、予定よりも遅れているといわざるを得ないが、次年度の早期に実施することで、この遅れを取り戻す予定である。

今後の研究の推進方策

研究計画に示した通り、一次資料の調査を進めつつ、「第三国による対抗措置」理論の批判的検討を理論と実行の双方の観点から進めることを予定している。
次年度は本年度に実施できなかった資料調査を含め、研究上の問いとして提示したもののうち、「対世的義務の重大な違反」は、国際社会の基本的秩序を脅かす事態が現に存在することを確認するための必要条件であり、十分条件ではないのではないか?について一定の見解をまとめることを目標として作業を行う。そのために、欧州連合の「制限的措置」に関する原則策定過程及び実行の調査および欧州連合本部における外交実務担当者へのインタビューを実施する。

次年度使用額が生じた理由

資料調査のために予定していたイタリア、フランス、ベルギーへの出張を実施することができなかったため。次年度の早期に調査出張を実施し、そのために使用することを予定している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2020

すべて 図書 (1件)

  • [図書] サブテクスト国際法2020

    • 著者名/発表者名
      森 肇志、岩月直樹
    • 総ページ数
      248
    • 出版者
      日本評論社
    • ISBN
      9784535524729

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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