研究課題/領域番号 |
18K01283
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
河野 真理子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90234096)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 国際司法裁判所 / 国際刑事裁判所 / 特別アフリカ裁判部 / アフリカ司法及び人権裁判所 / ECOWAS共同体司法裁判所 / 国連海洋法条約第15部 |
研究実績の概要 |
本研究の主たる研究目的の一つである、勧告的意見手続と国家間の紛争に密接に関連するものとして、2019年2月25日に、1965年のちゃとす諸島のモーリシャスからの分離の法的効果事件の勧告的意見が出された。この勧告的意見は、本来であれば、争訟事件手続で争われるべき紛争の一部が勧告的意見手続でどのように扱われるのか、又その場合に勧告的意見が求められた法的問題とその背景に存在する国家間の紛争との関係性を検討する重要な先例となっていると評価している。研究成果の一部は、論文集への寄稿で公表済であるが、さらにこの先例の意義の考察を続ける予定である。また、国際司法裁判所の訴追又は引渡しの義務に関する問題事件の2012年判決を受けて、2012年にセネガルとAU 委員会の間で締結された協定に基づく特別アフリカ裁判部の控訴裁判部の判決が2017年に出され、二審制のため、これにより判決が確定したことを受けて、国際社会における法の支配や社会正義の実現のために、国際裁判所の手続と国内裁判所の手続がどのように協働すべきかの議論がなされ、アフリカ地域からは国際刑事裁判所の裁判手続への批判も見られる。アフリカ地域において、AUやECOWASで地域的な国際刑事裁判手続の設けられるようになっていることは、地域を限定した国際裁判制度の発展をもたらすものとも考えられる。同様に1907年に設立され、10年で活動を停止した中米司法裁判所の再興も国際裁判制度の地域化の例と言えるのではないかと考えている。こうした国際社会における地域化の進展を踏まえ、国際社会における普遍的な国際裁判制度、地域的な国際裁判制度、及び国内の裁判制度の相互の関係にも研究の対象を広げた研究活動を行った。 国際法協会の「国際裁判手続きに関する検討部会」の研究会にも2019年9月と2020年1月に出席し、報告書の取り纏めのための議論に参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、国際裁判の研究に加えて、経済連携協定や自由貿易協定の分野での地域主義の進展に関する学会報告、海洋生物資源の保存及び管理と海洋環境の保護及び保全における地域的機関と普遍的機関の関わりについての原稿の執筆依頼を受けた。これらの研究にかなりの時間を必要としたため、国際裁判に関連する研究に費やせる時間が例年よりも少なくなったことを認めざるを得ないと考えている。ただし、経済分野も海洋生物資源の保存及び管理、海洋環境の保護及び保全は、国際裁判でも取り上げられる法的論点を多く含んでいる。またこれらの分野での地域主義の発展とその普遍主義との関連を考察することにより、国際裁判における地域主義の進展に関する研究についての重要な示唆を得ることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、本研究の最終年度にあたる。過去2年間の研究で、国際裁判における普遍主義と地域主義をも考察の対象とすることができるようになったと考えており、また、国際法上の個人の犯罪を裁くための刑事裁判制度では、国内法に基づいて設置されているとはいえ、国際的な要素を含んだ刑事裁判手続も見られるようになっている。様々な「国際的な」裁判制度が見られるようになっている中で、国際司法裁判所や国際海洋法裁判所の争訟事件手続と勧告的意見手続が、国際社会においてどのような役割を果たしうるのかを考察する研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書資料の購入に関して、研究に真に必要なものを厳格に選定して購入した。また、研究計画の時点では、英文の校閲費への支出を予定していたが、早稲田大学の制度で、英文校閲の補助があり、これを利用したため、校閲費の支出が必要なかった。これらの2つの理由で、使用額が予定を下回る結果となった。
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