研究課題
コロナ禍により海外渡航が制限されたこともあり、研究は遅れている。ただ、2021年9月に渡英して以降は、滞在先のケンブリッジ大学ラウターパクト国際法センターを拠点に、研究の遅れを取り戻しつつある。本研究課題は、国際経済紛争処理制度における国際法の原則及び規則の位置づけをテーマとし、WTO紛争処理と投資仲裁を研究対象としているが、2021年度は特にWTO紛争処理についての研究を中心に進めた。WTO紛争処理の今後のあり方を議論するためには、これまでWTOが貿易紛争処理の解決にどのように、またどの程度貢献してきたか、その中で国際法の原則及び規則がどのように位置づけられてきたかを検証する必要があり、過去の紛争処理事例の実証研究を進めた。研究の成果は2022年5月に書籍として出版される。また、WTO紛争処理や投資仲裁が被申立国・被申立人となった国の措置の違法性の有無を審理する際に、国の規制権限にどの程度配慮(deference)を払うべきかについて、他の国際裁判手続との比較研究を進め、レビュー論文として投稿したほか、口頭発表を行った。このほか、ケンブリッジ大学にて貿易紛争を研究する研究者と意見交換をする機会に多数恵まれたことに加え、オンライン等で研究会も開催した。研究協力者のJorge E. Vinuales教授とは、主として環境・持続可能性に関わる紛争の扱いについて意見交換を行った。今後環境関連貿易・投資紛争が増えると予想されており、環境関連国際法の原則及び規則の位置づけが一層重要な論点になると考えている。投資仲裁に関しても評釈を執筆するなど、研究を開始している。
3: やや遅れている
コロナ禍の海外渡航制限により、若干研究の進捗が遅れている。2021年9月の渡英後もコロナ関連の移動制限のため、ラウターパクト国際法センターにおける活動の多くがオンラインとなり、意見交換を行うのが容易でなかった。ただ、規制が徐々に解除され、ラウターパクト国際法センターにおける研究活動や海外との往来も活発化しており、遅れを取り戻しつつある。
2022年度は、投資仲裁を主たる研究対象とすることを予定している。国際法の原則及び規則の中でも、特に環境・持続可能性に関連するものの投資仲裁における位置づけについて主として研究を進める予定である。今年度中に同テーマについてのウェビナー開催を予定しているほか、関連する英語論文執筆も準備している。また、海外における調査を本格化させ、コロナ禍による遅れを取り戻したいと考えている。可能であれば、日本への海外研究者の招聘も試みたい。
コロナ禍により海外渡航が制限されたため、次年度使用額が生じた。コロナ禍の状況が改善しつつあるため、2022年度は、海外渡航を含め、国際共同研究に係る研究を中心に使用する計画をしている。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
Chia-Jui Cheng ed., A New Global Economic Order: New Challenges to International Trade Law
巻: - ページ: 301-340
Shin-yi Peng, Ching-Fu Lin & Thomas Streinz eds., Artificial Intelligence and International Economic Law: Disruption, Regulation, and Reconfiguration (Cambridge University Press, 2021)
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