研究課題/領域番号 |
18K01291
|
研究機関 | 小樽商科大学 |
研究代表者 |
國武 英生 小樽商科大学, 商学部, 教授 (20453227)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | イギリス労働法 / 労働契約 / シェアリング・エコノミー / 自営的就労 / 役務提供契約 |
研究実績の概要 |
本研究は、シェアリング・エコノミーと自営的就労の法的保護の在り方に関する比較法研究を行うものである。これは、雇用システムの変化やシェアリング・エコノミーの拡大を受けて、従属的な労働契約関係を対象とする画一的な労働法規制が機能不全にあるという問題意識から、自営的就労の法的保護のあり方に着目して比較法的検討を行うものである。 平成30(2018)年度における研究実績としては、本研究の成果の一部として、単著『労働契約の基礎と法構造 労働契約と労働者概念をめぐる日英米比較法研究』を2019年3月に日本評論社から出版した。同書は、イギリス及びアメリカの雇用契約と被用者概念をめぐる理論的基礎を明らかにするとともに、シェアリング・エコノミーをめぐる新たな理論動向について分析・検討を行ったものであり、現代社会における労働契約法理の分析と将来へ向けた問題提起を試みるものである。同書では、従属労働関係にこだわらず、労働市場を構築する観点からプラットフォーム企業を介在する働き方も含めた法的規制を指向していることを指摘した。 このほか、日本法の研究として、「NHK地域スタッフの労働契約法上の労働者性と労働契約の類推適用の可否」季刊労働法 261号(2018年)181頁、「派遣労働者に対する均等・均衡待遇をめぐる法的課題」法律時報91巻2号(2019年)33頁等を公表した。 本研究の課題は、わが国における理論的課題に応えるために、これまでの検討内容をより発展・具体化させることである。今年度は、イギリス及びアメリカにおけるシェアリング・エコノミーをめぐる理論動向、シェアリング・エコノミーと社会保障法制の接続に関する情報収集、整理を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本の問題状況の調査を行うとともに、イギリス及びアメリカのシェアリング・エコノミーをめぐる理論動向のサーベイを実施した。平成30(2018)年度は、予定通り順調に進んでいる。 令和元(2019)年には、イギリス現地にて、日本では入手困難な文献資料や論文、裁判資料等を収集する予定であり、今後はその内容を研究していくことになる。諸外国の状況は現在も流動的に動いているため、なお確定的な示唆を得られるにはいたっていない。これらの点は、今後研究を発展させていくことによって、十分達成可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元(2019)年度には、イギリスでの調査研究によって得られた資料の分析を進め、イギリス及びアメリカにおける理論状況を明らかにするとともに、社会保障法制との関連を含めた総合的な研究を行う。雇用と自営業を明確に分けた法構造が十分に機能しない実態があるが、そうした変容について各国はどのような理論に基づき対応しようとしているのか、いくつかの論点についての整理を試みる。 上記の作業と並行して、国内外で開催される労働法のあり方に関する学会、研究会などに可能なかぎり参加し、情報の発信と収集を行う。 令和2(2020)年度は、新たな理論構築を試みる年度として位置づけられる。これまでの研究を総括しつつ、本研究の成果をとりまとめ公表する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
海外の情報収集活動のために予算計上していたところであったが、教育研究業務と執筆活動等で日程の折り合いがつかず、海外出張を次年度に実施することとしたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額を含め、研究計画に基づいて適正に執行する予定である。
|