本研究は、シェアリング・エコノミーと自営的就労の法的保護の在り方に関する比較法研究を行うものである。これは、雇用システムの変化やシェアリング・エコノミーの拡大を受けて、従属的な労働契約関係を対象とする画一的な労働法規制が機能不全にあるという問題意識から、自営的就労の法的保護のあり方に着目して比較法的検討を行うものである。 最終年度に実施した研究成果としては、これまでの比較法研究をふまえつつ、国内での法的課題について分析した。これまでの研究を総括しつつ、本研究の成果をとりまとめ、その研究成果は、季刊労働法やジュリストといった専門雑誌で公表することができた(同「新たな働き方と労働時間管理―副業・兼業、テレワークを中心に」ジュリスト1553号(2021年)41頁、拙稿「全世代型社会保障検討会議フリーランスガイドライン案の意義と課題」季刊労働法 272号(2021年)30頁)。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果としては、単著『労働契約の基礎と法構造—労働契約と労働者概念をめぐる日英米比較法研究—』(日本評論社、2019年)が代表的成果となる。従来の労働者性の判断基準が適合しない働き方が増加するなか、そうした者に労働関係法規が適用されるのかという点が同書の基本的な問題関心である。同書は、自営的就労の保護のあり方に関する比較法研究の基礎を担うとともに、いち早くこの問題を検討することの重要性を明らかにした学術的成果として位置づけることができる。 3年間にわたる科研費による研究助成によって、自営的就労の保護をめぐる法的問題状況を明らかにし、法学的分析の基礎を形成することに寄与できたと考えている。
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