本研究は、電気通信事業法に設けられている複数の電気通信事業者の電気通信設備相互間の接続(以下単に「接続」という。)に関する制度のうち、接続請求応諾義務及び接続の業務に関する業務改善命令の制度から導き出される実体規範の内容を解明するとともに、立法論上の示唆を得ることを目的とするものである。 本研究においては、この目的を達成するため、接続請求応諾義務及び接続の業務に関する業務改善命令の制度に関し、その沿革、電気通信事業法に設けられている接続に関連する他の諸制度(協定の締結に関する協議の命令の制度及び協定の細目についての裁定の制度並びにこれらの前身、指定電気通信設備との接続に関する制度、電気通信紛争処理委員会による紛争処理の制度等)及び接続に関する諸制度以外の電気通信ネットワークの構築に関連する新旧の諸制度(業務委託に関する制度、約款外役務の提供に関する制度、卸電気通信役務の提供に関する制度(令和4年法70号により創設された指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務の提供に関する制度を含む。)、認定電気通信事業に係る役務提供義務及び業務改善命令の制度等)、起草時に参照された欧米における同種の制度、他の公益事業におけるネットワークの構築に関連する類似の新旧の制度等を参照しつつ、関連する裁判例及び学説を分析することを通じて、趣旨・目的、要件及び効果、保護法益及び保護範囲、指定電気通信設備との接続に関する制度との関係、一般競争法との関係等を解釈論として整理した。その上で、締約強制に関連する裁判例及び学説、継続的契約の解消に関連する裁判例及び学説、取締法規の私法的効果に関連する裁判例及び学説等を参照することにより、接続請求応諾義務の私法的効果についても考察を施した。
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