研究課題/領域番号 |
18K01298
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
新屋敷 恵美子 九州大学, 法学研究院, 准教授 (90610808)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 強行法規 / 合意 / 代位責任 / 法の実効性確保 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、第一に、イギリス労働法における制定法と契約法との関係を、制定法上の規定の強行性と当事者の合意との関係の検討から、明らかにした。これにより、制定法に定められた被用者(employee)の権利と使用者(employer)の義務が、当事者が設定する権利義務との関係で、どのように独立した機能を果たしているのか、果たすことが予定されているのか、を示した。イギリスでは、確かに、制定法上の権利義務は、契約上の権利義務の影響をうけるものの、たとえば、当事者が契約の条項により制定法上の権利義務を否定しても、当該契約の条項を制定法上の規定が無効とする仕組みとなっている。日本法の現状と比較した場合、そのような制定法上の規定の効果は明確である。本研究は、個別的労働関係法上の権利の実効性確保を一つの重要なテーマとしているところ、以上の比較研究から、イギリスにおける法の実効性の確保が図られる仕組みの一端が明らかとなった。 第二に、法の実効性確保の観点から、イギリス法の研究の中で、制定法と契約法を超えて、さらに不法行為法分野の代位責任の近時の判例法理の展開を考察した。観察対象を当初予定していたところより広げることにより、就労をめぐる法益がどのように認識されるようになっているのか、そして、制定法で新たに設定されている権利義務がどのように契約法ではなく不法行為法の分野で受け止められ、使用者の責任を構成するものとして展開しているのか、それがいかに法の実効性確保に資するものとなっているのか、の解明に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
思っていた以上に、イギリスにおける判例法理の展開が認められ、それを素材として着実に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は最終年度に入るので、広げてきた研究内容を一つにまとめる作業を行う必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染拡大の影響により、予定していた出張が不可能となった。本年度、旅費として計上している。
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