研究課題/領域番号 |
18K01302
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
西村 淳 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 教授 (20746523)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 地域包括ケア / 住民参加 / 社会福祉 / 地域福祉 / 社会保障法 |
研究実績の概要 |
初年度である2018年度は、まず、ライブラリーワークとして、わが国の社会福祉サービスにおいて、市民の参加を支援する公的責任の担保の観点から、地域福祉の権利関係がどのようになっているかについて、措置から契約へ、そして地域包括ケアシステムの構築へという社会福祉制度の歴史的な流れも踏まえて、文献を用いて整理を行った。その中で、情報提供・契約規制・質の評価・権利擁護・相談援助・苦情解決などの個人利用支援、地域計画・人材育成・資源開発・ネットワークづくりなどの地域支援、審議会・住民集会・パブリックコメント・行政手続・不服申立・行政訴訟など政策過程参加支援の仕組みが制度上どのようにつくられているかを整理することができた。 また、イギリスにおける地域福祉の仕組みについて、政府文献等を用いて整理を行った。1993年のコミュニティケア法から2016年の新ケア法への流れも踏まえ、ケア法の特色を明らかにするとともに、日本における制度の発展と対応した形で、イギリスにおける相談援助・地域資源開発などの仕組みを整理することができた。 地域ワークショップについては、横須賀市内において、地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生児童委員協議会、医師会、市役所などの地域福祉の実務関係者によるワークショップを、第1回は7月7日、第2回は12月22日、第3回は2月26日と3回開催し、地域支援の住民活動のあり方について活発な意見交換を行うとともに、今後の地域における参加型調査についての協議を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、まず地域福祉における参加支援論、権利論、日英比較についての文献調査を行うことにしていたところ、一定の成果を得ることができた。その成果の一部は下記の論文に反映している。 また、横須賀市の地域の実務関係者によるワークショップを定期的に行うことにしていたところ、7月7日、12月22日、2月26日と3回の開催を行うことができ、また当初予想よりも参加者が多く各回50名以上の参加者をえて、今後の地域調査についての具体的な協議を行うことができた。 こうした初年度の取り組みの成果は、「参加支援の観点から見た社会福祉の法体系論」(『神奈川県立保健福祉大学誌』)、「ケアの倫理と関係的権利に基づく社会保障制度の構想―イギリスのケア法制を手がかりに」(『年報公共政策学』)の一部に反映できた。また、英文で ’Inclusion of Local Residents by the Integrated Community Care System’ (Journal of Japanese Law)をまとめ、今後の日英交流の材料に資することにした。 一方で、初年度においてイギリス・メドウェイ市及びロンドン大学を訪問し、研究計画について予備的な打合せを行う予定にしていたが、調整ができず、これは実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる2019年度には、横須賀市内での地域包括支援センター、社会福祉協議会、民生児童委員協議会、医師会、市役所などの地域福祉の実務関係者とのワークショップを引き続き定期的に開催する。住民代表の参加も得たいと考えている。これらの関係者の協力を得て、地域福祉の法的権利にかかる運用実態と課題について実地調査を行うこととしている。具体的には、横須賀市上町第二地区においてどのような医療・福祉・生活支援の資源が存在し、どのような課題があるかの地域資源調査と、地域資源の現状と課題、今後の地域活動への参画意欲に関する住民意識調査を進めたいと考えている。 また、横須賀市の協力を得て、イギリス・メドウェイ市を訪問し、現地の地域ケアセンターの実務家の協力を得て、情報提供・権利擁護・相談援助などの個人利用支援、地域計画・人材育成・資源開発・ネットワークづくりなどの地域支援、住民集会・行政手続など政策過程参加支援の仕組みについてなど地域福祉の制度に関する調査を行うとともに、ロンドン大学老年学研究所において調査結果の分析を行っていきたい。 これら日本とイギリス両国における調査を踏まえて、地域福祉の法的権利構造についての分析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 初年度においてイギリス・メドウェイ市及びロンドン大学を訪問し、研究計画について予備的な打合せを行う予定にしていたが、調整ができず、これは実現できなかったため、次年度使用に回さざるを得なかった。 (使用計画) 2年度目にあたる2019年度において、イギリス・メドウェイ市及びロンドン大学を訪問し、研究計画を打ち合わせたうえで、調査を行うとともに、その結果の分析を行っていく予定である。
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